ミックスナッツの入った袋やビンを振ると、大きなナッツほど上に集まってきます。
これを「ブラジルナッツ効果」と呼びますが、イギリス・マンチェスター大学の研究チームはこのほど、ブラジルナッツ効果が起きる際の動きを3Dイメージで撮影することに初成功しました。
この成果は、医薬品や食品加工への応用が期待されています。
研究は、4月19日付けで『Scientific Reports』に掲載されました。
大きい粒ほど上昇する「ブラジルナッツ効果」とは?
「大きさの違う粒の集まりを上下に振ると、最も大きな粒が表面に浮き上がってくる」
これがブラジルナッツ効果です(ナッツの中で一番大きいのがブラジルナッツであることから)。
直感的には、大きいものほど下に落ちていきそうなのになぜでしょうか?
主な原因は「粒の対流」にあります。
例えば、ミックスナッツのビンを上下に振ると、当然ながらナッツは浮き上がります。
しかし、外側のナッツはビンとの摩擦により浮き上がりにくく、反対に内側のナッツほど上昇していきます。
内側ばかりが上がるとその下に隙間ができ、そのスペースにビン側のナッツが入り込んできます。
こうして内側のナッツが上昇し、ビン側のナッツが下降する対流ができるのです。
ところが、ビン側のスペースはすごく狭いので、大きなナッツほど下向きの流れに乗れません。
小さいナッツは狭い隙間を縫うように落ちていきますが、大きなナッツは上昇するナッツにぶつかりやすいので、むしろ上向きの流れに乗りやすくなるのです。
こうして大きなナッツほど表面に上がってきます。
その一方で、内側のナッツは隠れて見えないので、実際にどのような動きをしているのか分かっていませんでした。
今回の研究は、それを初めて撮影したものとなります。
大きいナッツはまず「水平から垂直」に向きを変えていた
研究チームは、X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、上下方向に撹拌されるミックスナッツの動きを撮影し、3Dイメージに変換しました。
これにより、実際には見えない内部のナッツの動きも視覚化できます。
その様子がこちらです。
この回では3つのブラジルナッツに上昇が見られ、その内の1つは70回の撹拌で上位10%の高さに到達し、あとの2つは150回の撹拌で同じ高さに達しています。
最下部のブラジルナッツは対流に乗ることができず、撹拌を繰り返しても浮き上がってきませんでした。
研究主任のパルメシュ・ガジャール氏は「この実験で重要な発見は、ブラジルナッツが実際に上昇する前に、まず水平方向から垂直方向に向きを変えていたことです。
横向きの状態では決して上昇せず、必ず垂直になり、表面に出た後は再び水平に戻っていました。粒の方向性が上昇の鍵を握っていたことは、今回初めて知られたことです」と説明します。
また、ナッツの動きを3D上で追跡することで、シミュレーションや予測モデルを生成できるので、ブラジルナッツ効果の予防策を見つけることも期待されます。
これは例えば、医薬品の錠剤に含まれる粒状成分を均一に分散させるなど、多くの産業にとって有効となるとのことです。
参考文献
Scientists Crack “The Brazil-Nut” Puzzle – How the Largest Nuts Rise to the Top
元論文
Size segregation of irregular granular materials captured by time-resolved 3D imaging
提供元・ナゾロジー
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