一般的に「うつ病」として知られる「大うつ病性障害」は、症状の重さが患者によって大きく異なります。

また不安神経症と同時発症することも多いため、正確な診断が難しいとされています。

イギリス・エディンバラ大学の臨床脳科学センター精神科に所属するアレックス・ストリーツ氏ら研究チームは、「顔と目の動きを追跡する」という安価な方法により、79%の精度でうつ病を検出することに成功しました。

研究の詳細は、2020年11月付けの科学誌『Psychological Medicine』に掲載されています。

目次

  1. 「顔と目の動きを追跡する」安価な方法でうつ病を検出する
  2. 79%の精度でうつ病を検出できる!一般的な診療所でも正確な検出が可能に!

「顔と目の動きを追跡する」安価な方法でうつ病を検出する

うつ病を正確に診断するための取り組みはこれまでにも行われてきました。

いくつかの研究では、抑うつ症状を検出するために脳画像データを利用しています。

しかし、この方法は高い費用がかかるだけでなく、熟練の技術者を必要とします。

そこで研究チームは、うつ病を検出できる簡単で低コストな方法を生み出すことにしました。

顔と目の動きから79%の精度でうつ病が検出できる技術が登場
(画像=注意を逸らす言葉対する反応データを収集 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

彼らは「うつ病が顔や目の特定の動きと関連する」という先行研究に注目し、実際に顔と目の動きで検出できるか実験しました。

実験では48人の参加者が作業記憶タスクと持続的注意タスクを行ないました。

タスク中、画面には注意をそらす言葉(肯定的・否定的・中立の3種類)が何度か表示されるようになっており、参加者がその言葉にどのように反応するか調査しました。

それぞれの言葉に対する反応の仕方(凝視するまでの時間、凝視の回数、時間など)で抑うつ症状が判断できるというのです。

安価なカメラで参加者の663の顔の動きと132の視線の動きが測定され、コンピュータに学習させました。

79%の精度でうつ病を検出できる!一般的な診療所でも正確な検出が可能に!

顔と目の動きから79%の精度でうつ病が検出できる技術が登場
(画像=フェイス・アイトラッキングでうつ病を検出 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

機械学習の結果、うつ病検出の精度は眼球の動きだけで65%、顔の動きだけでは67%でした。

そして両方を組み合わせることで、79%の検出精度が得られたとのこと。

またこの実験では、うつ病患者が肯定的な言葉への凝視が少ないという結果が出ました。

これは「抑うつ症状が高まっている人はポジティブな刺激に執着しない傾向がある」という以前の研究結果と一致しています。

研究チームによると、フェイストラッキングとアイトラッキングにおけるうつ病検出は、神経画像データを使用した研究と同程度の精度があるとのこと。

一般診療レベルであれば、今回の検出法がより安価で理想的だと言えます。

さらに深く検査したい場合はMRIを用いた脳画像検査を受けられるため、段階的な検査が可能になるでしょう。

研究チームは今後、顔と目の追跡システムをさらに改善していく予定です。

参考文献
Researchers use face and eye movement tracking to detect heightened symptoms of depression with 79% accuracy
元論文
Psychological Medicine Psychological Medicine Article contents Abstract References Prediction of depression symptoms in individual subjects with face and eye movement tracking

提供元・ナゾロジー

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