日本経済新聞の記事によれば、個人の国内銀行の外貨預金残高は2020年3月末に6兆5111億円となり、1年前と比較して1.6%減ったそうです(図表も同紙から)。

日本人の外貨運用の「2つの間違え」
(画像=日本経済新聞、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

この記事を読んで感じたことは、日本人の外貨資産運用は「2つの点で間違っている」ということです。

1つは、コストです。

外貨投資には為替手数料がかかります。日本の銀行の外貨預金は、外貨投資の中で為替手数料が最も高い金融商品です。キャンペーンや優遇レートなどによって手数料率は変わってきますが、FXや投資信託に比べ割高になっている場合が圧倒的です。

しかも、外貨預金は満期になった時、外貨で受け取ることができず、為替手数料が往復でかかってきます。為替リスクに見合ったリターンが期待できません。

だからまず「外貨投資=銀行の外貨預金」という発想は、捨てるべきです。

もう1つの間違えは、外貨資産を「為替のトレード」と考えていることです。

記事の中には、為替が円高に振れて含み損が出ている個人投資家の「せめて預けたときの水準に戻れば」というコメントが紹介されています。これは、為替が元のレートに戻ったら、外貨投資を止めて円に戻すということのようです。

外貨資産を保有する理由は、円安リスクのヘッジです。外貨資産を保有しないまま、円安が進んだ場合グローバルに見た購買力は低下します。もし、外貨資産を保有しないまま、例えば1ドル=150円になってしまうことを考えれば、外貨資産を保有しないリスクが実感できると思います。

円高になるか、円安になるかまったくわからないという場合、円安と円高の可能性は五分五分ですから、資産の50%は外貨資産で保有するのが合理的な投資判断です。

日本の個人金融資産は1800兆円とされていますが、円資産が9割以上で、外貨資産は10%未満に過ぎません。これは、将来円高になる可能性が、かなり高いと考える人が取るべきポジションです。

外貨資産を資産全体のどのくらいにするかを考えることは、極めて重要です。

円高になるか円安になるかでトレードをするのではなく、低コストの外貨保有手段を使って、アセットアロケーションの観点から外貨資産50%を基準にして外貨の保有比率を考えるべきです。

文・内藤 忍/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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