今回クローズアップする日本未上陸ブランドは、アメリカの独立系マイクロブランド、Orion Watches(オリオン・ウォッチ)だ。創設者のニック・ハリスは 幼少期から時計に興味をもっていた人物であり、そのきっかけは10代の頃、曾祖父から贈られたオメガ の1955年製コンステレーションだったそうだ。
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贈られたコンステレーションは動作はしていたものの、リューズと巻き真が欠けていたためニックはこの時計の修理を決心する。通常であれば時計店に修理を依頼するところだが、ニックは自力でアンティークのオメガを修理する方法を調べた。ただし、この試みはうまくいかなかった。書籍を読み込み、時計学の知識が増えるにつれ、ニックはアンティークのコンステレーションを修理することが当初考えていたよりもずっと難しいことだと理解することになったのだ。
ニックはそれでも諦めることをしなかった。壊れたセイコーのムーヴメントや時計を買い、修理の練習を始め、セイコーのムーヴメントについて学んでいくなかで、セイコーの時計を改造する時計愛好家のコミュニティーの一員となる。
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時計修理の知識を自力で勉強しつつ大学で工業デザインとプロダクトデザインを学んだハリスは、次のスキルアップとして、時計製造の学校に通うことを選択し、2016年から2年間、西海岸北部のワシントン州シアトルにあるスイス・アメリカ・ウォッチメーカー・トレーニング・アライアンス(SAWTA)で時計学を学ぶ。
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この学校で得た経験と知識は自身の時計ブランドを立ち上げることにつながり、アメリカに時計文化を取り戻すという個人的使命を果たすための足がかりとなった。アメリカで生まれ育ったニック・ハリスが、新しい世代の時計職人としてOrion Watches(オリオン・ウォッチ)でどのような影響を与えていくのか、今後も注目していきたい。今回は、そんなOrion Watches(オリオン・ウォッチ)から2つのモデルを紹介する。
Orion Watches(オリオン・ウォッチ)
テッセラクト
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テッセラクトはメイド・イン・アメリカの誇りを凝縮したオリオン・ウォッチのフラッグシップモデル。正八胞体(四次元超立方体)の立体的な装飾を施した文字盤が最大の特徴。手作業で研磨した後、CNCフライス盤で加工を施した文字盤は、ガルバニック処理(着色)行ったのち、一部の文字盤にはセミマットラッカーが施される。
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ロイヤルパープルの文字盤には、ホワイトロジウム色の針とオリオンのネームプレートが組み合わされている。 12時位置に配置されたブランドロゴのプレートは厚さがわずか0.20mm(10セント硬貨の厚さは約1mm)という繊細な仕様となっており、面取りや表面の加工を手作業で行うなど、細部にもこだわりが光る。
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ケースのサイズは39mmで厚さ10.5mm。内部にはMIYOTAのCal. 9039自動巻きムーヴメントを搭載。サファイアクリスタル風防、ねじ込み式リューズにより100m防水を備えている。 3色の文字盤から選択可能であるが製作には時間がかかり、合計19本の限定製造となっている。販売価格は3966米ドル、日本円で約51万6000円。
Orion Watches(オリオン・ウォッチ)
カラミティ
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次に紹介するのはコレクション唯一のダイバーズウオッチ、カラミティ。人間工学に基づいたケースバックのカーブは、腕になじみやすく快適な着け心地を感じる。文字盤はカーディナルインデックスと秒針に施された長いトライアングルが目を引き、シャープでクリアな印象を与えている。 操作しやすい大振りなリューズを採用し、深い輝きを放つベゼルはスチールベゼルとセラミックベゼルの2種類から選ぶことが可能だ。
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ベゼルのサイドとリュウズに施されたローレット加工は時計全体の魅力をさらに高めている。39.5mmのケースで、厚さは10.5mmとダイバーズウォッチとしては薄型で、内部にはセリタのCal.SW300自動巻きムーヴメントを搭載、ブルーARコーティングを施したドーム型サファイアクリスタル風防、ねじ込み式リューズにより200m防水を備えている。 5種類の文字盤から選択可能で販売価格は1650米ドル、日本円で約21万4000円。
》Orion Watches(オリオン・ウォッチ)
公式サイト
https://orionwatch.com/
文◎William Hunnicutt 時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
https://www.instagram.com/spherebranding/
提供元・Watch LIFE NEWS
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