巣作りの名人であるクモは、糸を巧みに編み込んで複雑な3次元の巣を作り、すみかや狩りの場としています。
そんなクモの巣を「音楽」に変換するという奇抜な研究が、マサチューセッツ工科大学(MIT)により発表されました。
それによると、クモ糸のサイズや張力に応じてそれぞれの周波数を特定し、人が聞くことのできる音に変換したとのこと。
クモの巣はどんな音を奏でているのでしょうか。
研究は、4月12日に開催されたアメリカ化学会(ACS)で発表されました。
音楽を介してクモと対話できる可能性も
クモは目がよく見えないため、巣の糸の振動を頼りに世界を理解します。
足に伝わる弦の響きが風によるものなのか、獲物が引っかかったものなのか、細かく見究めているのです。
研究主任のマーカス・ビューラー氏は、以前から音楽に強い関心を寄せており、「クモの巣のような自然素材からリズムやメロディを抽出できないか」と考えていました。
そこで同氏と研究チームは「Cyrtophora citricola」という熱帯性のクモを対象に実験を開始。
レーザー装置で巣全体をスキャンして2Dの断面図を採取し、それをコンピューターアルゴリズムを用いて3D上に再構築しました。
次に、巣に張り巡らされた各糸のサイズや張力、弾力を計測して、それぞれの周波数を特定。それらを人に聞こえる周波数に変換することで「音符」を作りました。
巣の3D構造にもとづくパターンで音符を組み合わせることで生成したメロディーがこちらです。
メロディーは、巣の下から上(図のz軸方向)に向かって再生したもの。
少し不気味なホラーテイストを感じさせますが、音の一つ一つは透き通っていて非常にキレイです。
チームは、これと別に、バーチャルリアリティ技術を使って、視覚的にも聴覚的にもクモの巣の中に入っていける動画を作成しました。
それがこちら。
こうした音(振動)の変化が、私たちにおける視聴覚情報として、クモの経験の助けとなっているのかもしれません。
ビューラー氏は「巣を目で見てもすぐには分からないような構造的な特徴を耳で感じられるので、バーチャルリアリティは非常に有効です。
視覚と聴覚で同時に巣をたどることで、クモが経験している環境、あるいは巣作りのプロセスをより詳しく理解できる」と話しています。
また、チームは、糸の振動を介したクモとの異種間コミュニケーションにも関心を抱いています。
クモは巣作りや仲間とのコミュニケーション、求愛信号の送信など、活動ごとに異なる振動を使っています。
その周波数を活動別に分類し、目的に合った振動を再現して与えることができれば、クモとの対話も夢ではないかもしれません。
これについてはビューラー氏も「非常にエキサイティングなアイデアだ」と興奮をあらわにしています。
音を架け橋にすることで、クモがより身近な存在となりそうです。
参考文献
Making music from spider webs
THE WAY SPIDERS BUILD STRUCTURES MAY TEACH US ABOUT HOW WE COULD BUILD BETTER
提供元・ナゾロジー
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