近年、スマートウォッチやスマートグラスなど、身に着ける電子機器「ウェアラブルデバイス」の開発が盛んです。

そんな中、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(略称:MIT)の人工知能研究所(略称CSAIL)に所属するYiyue Luo氏ら研究チームは、人の動きやポーズを感知する生地「触覚テキスタイル」を開発しました。

これは特殊な繊維が編み込まれた生地です。この生地で作られたシャツを着たり靴下をはいたりするだけで、正確な動きが検知できるとのこと。

研究の詳細は、3月24日付けの科学誌『Nature Electronics』に掲載されました。

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特殊繊維を編み込んでつくる触覚感知の織物

特殊繊維を編み込んでつくる触覚感知の織物

私たちが身体の動きを検知・分析したい場合、ウェアラブルデバイスが役立ちます。

この種の従来のウェアラブルデバイスは、身体に多数のセンサーを身に着け、そのセンサーから動きを読み取るというものでした。

しかしLuo氏によると、「たくさんのセンサーアレイを製造すると、そのうちのいくつかは動作しなかったり、他より動作が悪かったりします」とのこと。

大量生産のセンサーを多数装着する従来の方法では、高精度のデータを得るのが難しいのです。

「触覚を検知できる特殊な繊維」を開発 センサーは「装着する」から「着る」時代へ
(画像=触覚を感知できる特殊繊維を編み込む / Credit:Yiyue Luo,『ナゾロジー』より 引用)

そこで研究チームは、触覚を感知できる特殊な繊維を使うことにしました。

衣服にセンサーを装着するのではなく、まず触覚センサーを編み込んだ生地をつくり、その生地で自由に衣服をつくれるようにしたのです。

これにより、着用者の動きやポーズを正確に把握できる「触覚テキスタイル(織物)」が完成しました。

「触覚を検知できる特殊な繊維」を開発 センサーは「装着する」から「着る」時代へ
(画像=触覚テキスタイルは柔らかい / Credit:Yiyue Luo,『ナゾロジー』より 引用)

触覚テキスタイルの利点は、少量の特殊繊維を編み込むだけなので、通常の布地と同じように扱えることです。

柔軟性・通気性・伸縮性が備わっており、さまざまな形に適用できます。

また既存のウェアラブルデバイスとは異なり、大規模な衣服生産に組み込むことも可能とのこと。