現在の天体観測は、非常に多くの太陽系外惑星を発見しています。

しかし、発見される系外惑星のタイプを見ていくと、現在の惑星形成モデルでは説明のつかない問題が浮かんでくるのだといいます。

2月11日に科学雑誌『Nature Astronomy』で発表された新しい研究は、そうした問題を解決させる新しい惑星形成モデルのシミュレーションに成功したと報告しています。

その新しいモデルでは、惑星形成に作用する力として従来の重力の影響だけでなく、磁力を計算に入れるのだといいますが、それは一体何を意味するのでしょうか?

目次
系外惑星に見られるとある疑問
惑星を形成する2つの力

系外惑星に見られるとある疑問

ここ25年間で、天文学では4000を超える系外惑星が発見されました。

そこには、非常に熱いガス惑星であるホット・ジュピターや、スーパーアースと呼ばれる太陽系には存在しないタイプの多様な惑星が数多く見つかっています。

ホット・ジュピターは太陽の近くにある巨大ガス惑星で、その名の通り木星タイプの惑星です。

スーパーアースは地球より数倍から10倍程度大きい岩石惑星で、中間質量の惑星ということができます。

惑星の種類に多様性があることは、現在の惑星形成モデルから考えた場合不自然なことではありません。

現在のモデルでは、惑星は原始太陽が周囲のチリやガスを巻き込んで作り出した原始惑星系円盤から形成されると考えられています。

「新しい惑星の形成過程」が提唱される 重力の他に磁力が重要な要因になっていた
(画像=原始惑星系円盤のイメージ。若い恒星を取り巻く岩石などの塵や、氷の粒が惑星形成の材料となる。 / Credit:A. Angelich (NRAO/AUI/NSF)/ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)、『ナゾロジー』より引用)

この円盤内で重力の不安定性がきっかけとなってチリとガスが凝集し、これが核となって最終的には惑星が形成されます。

これは主星からの距離や、周囲物質の種類によってさまざまなタイプの惑星が形成されるのです。

ただ、このモデルに従った場合、現在宇宙で見つかる惑星タイプの偏りに疑問が浮かぶのだといいます。

それは、現在宇宙にもっとも普遍的に存在し、数多く見つかるタイプの惑星がスーパーアースだということです。

スーパーアースが生まれた場合、それは円盤内で暴走的なガスを捕獲する確率が高くなるため、通常は巨大ガス惑星に成長する可能性が高くなります。

このため、現在の惑星形成モデルの予想では、スーパーアースよりホット・ジュピターのような重い巨大ガス惑星の方が多く見つからないと不自然だということになるのです。

ではなぜ、宇宙には巨大ガス惑星よりも、中間質量の岩石惑星スーパーアースの方が多いという結果になるのでしょうか?

これまでその理由については、主に2つの原因が考えられていました。

1つはスーパーアースが、円盤ガスの腫れ上がりの直前に形成されたため、あまりガスを捕獲できなかったという説です。

もう1つは、スーパーアースは惑星形成の初期に形成されたものの、何らかの理由でガスを捕獲できなかったという説です。

この何らかの理由は、惑星の大気循環などが原因となってガスの捕獲を阻害するというものですが、現実的に考えた場合、スーパーアースは惑星形成時期の遅い段階で形成されやすいという解釈の方がもっともらしいといえます。

ただこれを明確に説明する方法はわかっていませんでした。

そこで、今回の研究は惑星形成モデルを見直して、新たな形成プロセスを考えたのです。

惑星を形成する2つの力

研究チームが考えたのは、惑星形成に磁場が関連しているというものでした。

これまでの惑星形成モデルは重力のみが想定されてきました。

これは非常に広範囲に影響する力ですが、より惑星の核に近い短い距離では、磁場のほうが支配的です。

そこでチームは磁場が惑星形成に与える影響を含めたモデルを作ろうと考えました。

しかし、重力と磁力は規模も性質も異なる力のため、これを統合するというのは非常に困難です。

これまでのところ、片方の効果をうまく捉えたコンピュータシミュレーションは、もう一方の力をうまく取り込むことができませんでした。

そこで研究チームはさまざまな専門知識を駆使し、重力と磁気の両方について深い理論的理解をした上で、これをコードに変換して対照的な力を同時に効率よく計算するシミュレーションを作り上げたのです。

これは非常に膨大な計算量を必要としました。そこでチームはスイス国立スーパーコンピュティングセンター(CSCS)の強力な計算機「PizDaint」を使って、このモデルの計算をおこなったのです。

「新しい惑星の形成過程」が提唱される 重力の他に磁力が重要な要因になっていた
(画像=原始惑星系円盤を流れる磁力線のシミュレーション。 / Credit:Jean Favre (CSCS).、『ナゾロジー』より引用)

この結果は非常に興味深いものとなりました。

磁場は成長中の惑星に質量を取り込む重要な力としてはたらきましたが、これはある質量を超えたとき物質を蓄積することが困難だったのです。

これはまさに私たちが観測している宇宙の状況と一致するものでした。

つまり、惑星形成はある質量までは磁場の影響によりスムーズに進みますが、それ以上のサイズへ成長することは基本的に困難だということが示されたのです。

重力と磁力、2つの力の作用によって、宇宙には中間質量惑星が多く形成され、巨大ガス惑星は稀な存在となっていたのです。

この結果は、まだ最初のステップに過ぎないと研究チームは語っていますが、惑星形成シミュレーションをより深く理解していくために重要な発見となるものです。


参考文献

A new way of forming planets

元論文

Formation of intermediate-mass planets via magnetically controlled disk fragmentation


提供元・ナゾロジー

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