新型コロナウイルスに対して有効な新型マスク…いえ、新型ヘルメットが開発されました。

1月12日に『AIP Physics of Fluids』に掲載された論文によれば、この奇抜なヘルメットはエアロゾルの流出を99.6%ブロックし、ウイルスの伝染を防止するとのこと。

しかしこの新型ヘルメット、見かけのインパクトが大きいだけでなく、驚くべき秘密が隠されていました。

目次
エアロゾルをブロックする仕組み
他人のための感染防御

エアロゾルをブロックする仕組み

空気を「吸い込み」ウイルスの伝染を99.6%ブロックするヘルメットが開発される
(画像=上のエントツから掃除機などで空気を吸い出すことでマスクは機能する / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

今回開発されたヘルメットは、厚さ1ミリメートルの透明なプラスチックでできており、頭頂部には空気ろ過フィルターを備えたエントツがそびえ立っています。

実際に使う時には、頭頂部のエントツに掃除機のように空気を吸い込む機器を接続します。

するとヘルメット内部で空気圧が急速に低下し、口から頭頂部へ勢いよく空気が流れるようになります。

口の部分には一切のフィルターはつけられていませんが、外側から内側へ向かう空気の流れにより、着用者が吐き出す息やエアロゾルを回収可能となるのです。

空気を「吸い込み」ウイルスの伝染を99.6%ブロックするヘルメットが開発される
(画像=咳がおきてから0.45msと1ms後の液滴の様子。1ms後には重い液滴を除いてほとんどが吸引されていった。残った重い液滴はより遠くに飛ぶようにみえるが実際はすぐに落下してしまう / Credit:AIP Physics of Fluids、『ナゾロジー』より引用)

上の図はコンピューターモデルを使用して、咳によって吐き出された様々なサイズの液滴が、ヘルメット内に吸引される様子を示しています。

シミュレーションの結果、吐きだされた液滴の99.6%を回収できることが示されました。

取りこぼしてしまった0.04%の液滴(上図の青と黄緑の粒子)は、サイズの大きな重い液滴たちでしたが、これら大きな液滴は飛距離が短く、遠くに拡散する前に地面に落ちるため、直接の感染リスクにはつながりにくいとのこと。

それでも気になる場合は、真空圧を上げることで、対応可能になります。

今回の論文の筆頭著者となった研究者は、このヘルメットをまず歯科医や耳鼻科医などの治療現場で普及させることを目指すと述べました。

口の部分に遮るものが存在しないこのヘルメットは、歯や鼻の治療を妨げないまま、医師や看護師を感染から守ることができるのです。

他人のための感染防御

空気を「吸い込み」ウイルスの伝染を99.6%ブロックするヘルメットが開発される
(画像=フルフェイスマスクの内部及び外部の空気の流れ。この図からわかるようにこのフルフェイスマスクは外部からの空気を一切遮断しない / Credit:AIP Physics of Fluids、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究により、新たな感染防止ヘルメットが誕生しました。

以前にも感染防止だけでなく、顔認識を防止する役割もあるフルフェイスマスクを紹介しましたが、今回のヘルメットは非常に簡易な構造をしているため、本体価格は200~300円ほどに抑えられるとのこと。

世界初の新型コロナ対策「フルフェイスマスク」が発売! N95マスクと同じ性能でプライバシーも保護 – ナゾロジー

空気を「吸い込み」ウイルスの伝染を99.6%ブロックするヘルメットが開発される
(画像=フルフェイスマスク「BLANC」、1つで8200円。 / credit: Blanc inc、『ナゾロジー』より引用)

また今回のヘルメットは空気の吸引に使うホースを分岐させれば、一台で複数人数の空気を吸引可能になります。

この空気吸引は、原理的には家庭用の掃除機でも代替可能であり、高い汎用性を持つと言えるでしょう。

ただ唯一の弱点(秘密)があるとすれば、着用者本人に対しては、感染を防ぐ能力が全くない点があげられます。

今回開発されたヘルメットはあくまで、自分から他人への伝染を防ぐためのものだからです。

使用される場所は限定されていますが、病室などで周囲の人全員がこのヘルメットを着用すれば、結果的に伝染もブロックされるため、新型コロナウイルスも速やかに収まるかもしれませんね。


参考文献

inverse


提供元・ナゾロジー

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