point
- 人の場合、利他的な行動は、1歳半から始まっていることが最新の研究で発表される
- 一歳半の乳児は、自分が空腹状態の時でも見ず知らずの大人に食べ物を与えることができた
チンパンジーなどの霊長類は、大人になっても他人とフードシェアすることがほとんどありません。それをする場合は、相手が近縁者か、あるいはグループ外の者と関係を強めて、自分の利益になる場合に限ります。
ところが人間は、自分を後回しにしても空腹状態にある他人に食べ物を分け与えるのです。
こうした「利他的行動」は、いつからできるようになるのでしょうか。
今回、ワシントン大学の研究により、人は1歳半の乳児期からすでに利他的な行動を始めることが明らかになりました。
研究はアメリカ小児学会にて発表されています。
人の「利他的行動」は1歳半から始まる
研究チームは、生後19ヶ月の乳児100人を対象に、乳児が好む果物(ブルーベリー、バナナ、ブドウなど)を用いて、見ず知らずの他人に自発的に果物を手渡すかどうか実験しました。
まず、乳児は黒い台をはさんで、知らない大人と向かい合いに座らされます。乳児側にトレーが置いてあり、そこに大人が偶然をよそおって果物を落とします。大人側からは届きません。
実験では、乳児を2つの組み「コントロール・グループ」と「テスト・グループ」に分けています。
コントロールでは、大人は何の指示や感情も示しません。反対にテストでは、大人は必死で落とした果物を取ろうとします。
すると、コントロールでは、乳児のわずか4%が果物を取ってあげたのに対し、テストでは、半数以上が果物を手渡したのです。
この結果は、乳児の時点で、困っている他人に対し、利他的な行動が取れることを示します。
次の実験では、別のグループの1歳半の乳児を対象に、自分が空腹の時(普段、ご飯を食べる時間帯)にも同じ利他的行動が取れるかをテストしています。
予想では、自分の利益に関わることなので、乳児は他人に果物を与えない、と考えられていました。
コントロールでは、確かに予想通りの反応を示しましたが、テストでは、37%の乳児が、空腹状態であるにも関わらず、相手に果物を手渡したのです。
この結果は、自分を犠牲にするような真に利他的な行動が、乳児期から可能であることを証明しています。
こうした利他的行動を取った乳児に共通する点は、まだ定かではありませんが、研究主任のロドルフォ・C・バラガン氏は「幼い時期から利他的な社会行動を学べるような環境、たとえば兄弟姉妹がいることが関係しているかもしれない」と指摘しています。
提供元・ナゾロジー
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