ダーウィンが「ヒトはサルから進化した」と発表した当時、世間では激烈な反応が引き起こされました。
人間は神から造られたという創造説が否定されてしまうからです。
しかしダーウィンにすれば、サルから進化したことすら、ほんの序の口に過ぎなかったでしょう。
すべての生き物は、元をたどればあるひとつの動物に起源を持つのですから。
一方で、最初の動物が何だったのかは、まだ決着がついていません。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)は今回、その2大候補となっている生物を対象に、コンピューターモデルを使って、どちらが最初の動物であるかをシミュレーションしました。
はたして、どんな結果が出たのでしょうか。
研究は、12月11日付けで『Science Advances』に掲載されています。
最初に誕生したのは「スポンジ」か「クシクラゲ」か?
19世紀からつい最近まで、最初に誕生した動物は「海綿動物(sponge)」とされていました。
海綿動物は今も世界中の海に生息し、柔らかな繊維だけからなり、硬い骨片は持ちません。
その名の通り、スポンジとして化粧や入浴用の道具に使われています。
構造がシンプルであることも、最初に誕生した動物として納得される点でした。
ところが、ここ10年の研究で、もう1つの候補が急浮上してきました。
それが「有櫛(ゆうしつ)動物」です。
有櫛動物は「クシクラゲ類」とも呼ばれますが、クラゲ(刺胞動物)とは別のグループに分類されます。
海綿と同じくシンプルな姿ですが、大きな違いは、神経細胞や筋肉、腸など、ヒトに通ずる高度な器官を持っている点です。
しかし、専門家の中に「もし有櫛動物が最初の動物なら、そこから誕生したすべての生物(スポンジも含む)は同じ器官を持っているはずだ!」とするグループが現れました。
確かに、有櫛動物が先なら、スポンジたちは複雑な器官を失くしたと仮定しなければなりません。
ここから生物学者たちの大論争が始まりました。