ワシントン大学(University of Washington・米)はこのほど、約2万4000頭の飼い犬を対象とした研究で、1日1回しか食事を与えないイヌは、食事の回数が多いイヌに比べて、加齢にともなう疾患の有病率が低いことを発見しました。

10年間の追跡調査の結果、1日1食の個体では、消化器系、腎臓・分泌系などの病気発症リスクが有意に低かったとのこと。

しかし、研究チームと獣医師らは「まだ相関関係の段階にあり、科学的証拠が見つかるまで食事方法を変えるべきではない」としています。

本研究は、査読前論文として、11月11日付けのプレプリントジャーナル『bioRxiv』に掲載されています。

目次

  1. 「断食」は体に良い食事法

「断食」は体に良い食事法

特定の時間にだけ食事をする「断続的断食(インターミッテント・ファスティング)」について聞いたことがあるかもしれません。

これはエネルギー制限やアンチエイジングを目的とした食事法で、断食(水分はOK)と通常の食事を交互に繰り返します。

最も有名なのが「5:2ダイエット」で、1週間のうち5日間は通常の食事を摂り、残り2日は断食する方法です。

一般的なダイエットでは、炭水化物や脂肪の摂取量を減らすなど、「何を食べるか」に重点が置かれますが、断続的断食では「いつ食べるか」が重要になります。

流行のダイエット法とは異なり、さまざまな健康上の利点が科学的に裏付けられています。

今年1月、学術誌『Nature Aging』に掲載された研究では、酵母からヒトまでの生物を対象に、断食が長寿に及ぼす影響を分析。

その結果、断食と摂食を交互に繰り返すことで、老化、糖尿病、自己免疫、心血管疾患、神経変性、がんなどのリスク要因が減少していることが明らかになりました。

研究チームは今回、これと同じ効果が、イヌにも見られるかを調査しています。

「一日一食」のイヌは有病率が低い

本研究は、数千頭のイヌを10年間にわたって追跡調査するプロジェクト「Dog Aging Project」の一環として行われました。

これは、健康寿命を最大限に延ばすための生物学的および環境的要因の解明を目的とした意欲的な取り組みです。

そして、イヌの性別、年齢、犬種、その他の潜在的な交絡因子をコントロールしたところ、1日1食のイヌは、1日多食のイヌに比べて、認知機能障害スケールの平均スコアが低く、消化器系、歯科系、外科系、腎臓・泌尿器系、肝臓・膵臓系の障害を持つ確率が低いことが分かったのです。

チームはこの健康効果について、「断食によって引き起こされる代謝反応と細胞反応によるもの」と考えています。

また、イヌはオオカミから進化した肉食動物であり、オオカミは次の獲物を見つけるまで何日も食事しないことが多かったため、イヌでも時間制限のある食事が健康に有益になっていると推測しています。

イヌは「一日一食」にすると有病率が低くなるという研究
(画像=まだ相関関係の段階なので、実践は避けるべき / Credit: jp.depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

同プロジェクトではこれまで、イヌの健康が腸内細菌にどのような影響を受けるか、あるいは犬種ごとの遺伝性疾患のリスクについて調査してきました。

摂食パターンに関する新たな研究は、断食が飼い犬を加齢にともなう疾患から守る可能性を示す有力な証拠となりますが、一方で、現時点では純粋な相関関係にしか過ぎません。

また、今回の調査データには、それぞれのイヌが具体的に何を食べたか、カロリー数などの情報は含まれていませんが、これは非常に重要な情報です。

研究チームは今後、長期間にわたってイヌの食事をモニタリングし、管理された環境で健康への影響を測定したいと考えています。

それまでの間、飼い主はイヌの食事を無理に変えないようにしてください。

現在のところ、ほとんどの獣医師会は1日2回の食事を与えることを推奨しています。


参考文献

Feeding dogs only once a day may protect them from age-related disease

元論文

Once-daily feeding is associated with better cognitive function and health in companion dogs: Results from the Dog Aging Project


提供元・ナゾロジー

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