地球温暖化は日が照っている日中に進んでいるような印象を受けます。
しかし、9月30日に科学雑誌『GlobalChange Biology』に発表された新しい研究では、夜間に温暖化の進んでいる地域が多いという意外な結果を報告しています。
この昼夜で非対称に進む奇妙な温暖化の実態は、主に雲量の変化が関連していて、地球上でさまざまな問題を引き起こす可能性があるといいます。
目次
昼よりも夜間に進む地球温暖化
非対称な温暖化が及ぼす影響
昼よりも夜間に進む地球温暖化
イギリスのエクセター大学の研究チームは、1983年から2017年にかけて温暖化の研究を行い、世界陸面積の半分以上の地域で日中と夜間の温暖化に年平均0.25℃の差があるということを発見しました。
夜に温暖化の進んでいた地域は総面積のおよそ2倍以上で、これは温暖化が昼夜非対称に進んでおり、不釣り合いに夜時間帯で進行していることを意味しています。
研究では、この「温暖化の非対称性」は主に雲量レベルの変化によってもたらされているといいます。
温暖化は地球全体の気候に影響を与えるものですが、これは世界中の雲の量にも大きな変化を及ぼすと考えられています。
雲の存在は日中の日照時間や、宇宙から降り注ぐ紫外線の影響、地表から放射される赤外線の反射などで、地上の気候に大きく影響を与えます。
しかし、実際温暖化によって世界の雲の量がどのように変化しているか、またその影響がどのように現れるかはまだ明らかになっていません。
今回示された昼夜非対称に進む温暖化の実態は、そうした問題の一端に触れているものだと考えられます。
夜間に進む温暖化。それは一体何を意味しているのでしょうか?
今回の研究筆頭著者であるエクセター大学のダニエル・コックス博士は、こうした「温暖化の非対称性は自然界に重大な影響を与える可能性がある」と警告しています。
非対称な温暖化が及ぼす影響
雲が増加すると、日中の地表を冷やし、逆に夜間は放射冷却を抑えて気温を保つように働くため、夜間の温暖化を促進させます。
雲が減ると、日中はより地表が熱せられ、夜間は熱を放射して失う量が増加します。
昼と夜で温暖化が異なった進み方をするということは、地域によって雲の量に変化が生まれていることを意味します。
夜間温暖化が進んだ地域は、地表が熱せられたことで水蒸気が増えて雲を増やしています。これは日中の日照時間を減らしています。
一方、日中に温暖化が進んだ地域は、気候が乾燥傾向に進んでいることがわかっています。これは降水量の減少につながっています。
どちらのパターンであっても、これは植物の成長に対して大きな打撃を与える変化です。
つまり、夜間温暖化が進む地域では、昼の日照時間が減ることで植物の成長は阻害され、昼に温暖化の進む地域は乾燥によって植物の成長が阻害されます。
これはどうあっても、温暖化によって植生に不利な環境が増加していることを意味しているのです。
また、夜間温暖化の進む地域は気候が湿潤傾向に進むことが示されています。
日本に住んでいると強く実感する事実ですが、昼間の湿度の上昇は、動物の熱疲労のリスクを高める要因となります。
夜間に温度が上昇することは、動物の回復能力を低下させる可能性も指摘されていて、全体的に種を脆弱にさせる要因になると考えられるのです。
雲が増えているとか、夜に温暖化が進んでいる、と言われてもなんとなくピンときませんが、これは地球全体で生物に不利な環境が増えている現れなのかもしれません。
参考文献
University Of Exeter
提供元・ナゾロジー
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