中国・雲南省士林にある「石の森(英: Stone Forest)」は、その名の通り、先のとがった石山が針葉樹林のように林立しています。

仙人が住んでいそうな荘厳な見た目をしていますが、この石の森がどのようにしてできたのかは大きな謎でした。

ところが今回、ニューヨーク大学の最新研究により、何世紀もの間、専門家を悩ませ続けたこの難問にひとつの解答が付されました。

9月8日付けで『PNAS』に掲載された報告によると、巨大な岩山が水の浸食により溶け出して、先の鋭い石柱が作られたとのことです。

目次
針葉樹林のように砂糖を使った「石の森」の再現に成功
ホンモノの「石の森」は完成までに数十〜数百年

針葉樹林のように砂糖を使った「石の森」の再現に成功

石の森は、これまでの調査で「カルスト地形」の一種であることが分かっています。

カルスト地形とは、石灰岩などの水に溶けやすい岩石が、雨水や土壌水によって浸食されることでできる独特な地形のことです。

研究チームは、この点に着目し、砂糖を使って浸食による岩石の溶解を再現してみました。

まず、砂糖と水、シロップを適切な比率で混ぜて、糖分が99%となるハードクラックキャンディを作ります。

それを水に浸して数時間観察を続けると、キャンディが徐々に溶け出して、見事に石の森と同じ針山ができました。

一連の実験とシミュレーションを繰り返すうち、先の尖った石柱ができる仕組みが明らかになってきました。

キャンディが水に溶け出す際、密度の高い溶質(水に溶けた糖分)を含む水が重力で下降し始めます。すると、その流れが、まだ溶けていない固体の周囲に持続的な水の流れを作り出していました。

この流れが先の鋭い針山を作っていたのです。

中国の「石の森」ができるメカニズムをついに解明か。石柱の先が尖る理由とは?
(画像=溶質によってできる水の流れ/Credit: NYU’s Applied Mathematics Lab、『ナゾロジー』より引用)

ホンモノの「石の森」は完成までに数十〜数百年

実験上では、数時間で似たような針山が再現されましたが、ホンモノは浸食に数十年〜数百年はかかるとのことです。

また、実際の石の森は多孔質の岩石であり、無数に空いた穴に水が入り込んで、溶解や水流を作る役割を果たしたと予想されます。

そして、水面上に露出した部分が空気に触れることで固まり始め、石の森として地上に残されたのでしょう。

中国の「石の森」ができるメカニズムをついに解明か。石柱の先が尖る理由とは?
(画像=マダガスカルの「ツィンギ・デ・ベマラ厳正自然保護区」にある石の森/Credit: Stephen Alvarez / Grant Dixon、『ナゾロジー』より引用)

中国の伝承では、「アシマ」という乙女が恋人との結婚を禁じられ、絶望のあまり川に身を落とし、石になって天に伸びたことから石の森ができたと伝えられています。

しかし真相は、石が伸びたのではなく、溶けて縮んだというのが正解かもしれません。


参考文献

sciencealert
sci-news
scitechdaily


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功