日本ではあまり知られていない大規模言語AIのすごさ

言語AIで物書きの仕事はなくなるのか。話題の文章作成AI「ELYZA Pencil」に見る、人間とAIの未来
(画像=『TECHABLE』より引用)

——そもそも、どうしてELYZA Pencilを開発し、公開することにしたのでしょうか。

平川:より多くの方々に、大規模言語AIに触れていただきたいからです。

2012年頃から、ディープラーニングの登場をきっかけに第3次AIブームが起こっています。このブームのなかで、画像認識や音声認識のすごさはよく知られており、私たちの生活にもSiriやAlexaなどの形で溶け込んできています。

しかし、ここ3、4年で起きた言語AIのパラダイムシフトについて、海外では知られているものの、日本ではあまり知られていない状況なんです。

——その理由はなんでしょうか。

平川:パラダイムシフト後の技術である大規模言語AIに取り組んでいるプレイヤーが少ないことなどがありますが、何よりも大規模言語AIに触れる機会が少ないことが理由だと当社では考えています。

そこで、ELYZA Pencilをデモサイトという形で無料公開することで、気軽に体験しやすくしました。「言語AIって、なんだかすごいらしい」という感覚を腹落ちさせることができるのではないかと考えています。

——企業からも業務効率化に活用したいとの相談が寄せられていると聞きました。

平川:大規模言語AIを活用することで、主にホワイトカラー領域における大幅な業務効率化が実現できる可能性があります。実際に導入していただいている企業も多数あります。

たとえば、多くのビジネスパーソンにとって、業務時間のうちメールを書くのに充てる時間は決して少なくありません。また、コールセンターで働く方々は、電話対応後に記録を残すことに多くの時間を割いていると言われています。

これらホワイトカラー業務の10%以上をELYZA Pencilを含む大規模言語AIで代替できる可能性があるのではないかと想定しています。余った時間を使って、仕事の質と量をアップできるでしょう。

ビジネス以外ですと、日本語で文章を書くことを練習したい方々にアドバイスするなど、教育面でも活用できるのではないかと考えています。

——精度に関して課題はありますか。

平川:課題はまだまだたくさんありますが、人間にとって一般常識のようなことをAIが理解できていないために生じる問題があります。

たとえば、時間の問題です。4月10日にイベントがあるとします。人間なら案内をメールで送るときに、「出欠は4月8日までにお知らせください」など、出欠返信の締め切りをイベント前に設定しますよね。

一方、AIは時間の関係を学習することが難しいため、出欠返信の締め切り日をイベント後に設けてしまうことがあるのです。

このような問題が、解決すべきこととしてあります。

言語AIで物書きの仕事はなくなるのか

言語AIで物書きの仕事はなくなるのか。話題の文章作成AI「ELYZA Pencil」に見る、人間とAIの未来
(画像=『TECHABLE』より引用)

——記者やライターのような、書くことを仕事にしている人たちは、言語AIの進化によってどのような影響を受けると考えますか。

平川:ストレートニュースの翻訳や要約といった仕事はAIが代替していくと考えます。

一方で、企画や、どのような形で読者に届けるかを考えることなどは、AIが対応するのはまだ難しいと感じています。

——よく「AIは人間の仕事を奪うのか」という議論を耳にします。人間とAIは今後、どのような関係になっていくと考えますか。

平川:基本的に単純作業と呼ばれるものは、今後はAIがおこなうでしょう。AIにもまだ課題があるので、完全に代替するまでとなると、まだまだ先のことではないでしょうか。

当社が目指しているのは、人間とAIの共存です。ELYZA Pencilという名前も、鉛筆のように、多くの方々にとって慣れ親しんだツールになってほしいという想いを込めています。

ただ、そのような存在になるためには、先ほどお話したような課題があるのが現状です。今後も引き続き文章執筆AIの精度向上に努め、社会実装を通じて日本語における自然言語処理の発展に貢献していきたいと考えています。

(文・和泉ゆかり)

提供元・TECHABLE

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