「自分の身は自分で守る。」
厳しいですが、これが自然界の掟です。
サメやトラ、ワニといった強い捕食者ならまだしも、小さな虫たちには限界があります。天敵と出くわしてしまえば、まず生き残ることはできません。
そこで彼らがきわめたのは「モノマネ(擬態)」です。
昆虫は見つからない技術を極限まで高めることで今日まで生きのびてきました。
一体、どんなモノマネ戦略を進化させたのでしょうか?
目次
オーソドックスな「隠ぺい擬態」
毒虫に化ける「ベイツ型擬態」とは?
オーソドックスな「隠ぺい擬態」
最もたいせつな点は、敵に見つからないことです。
小さな虫たちは元から隠れるのが得意ですが、さらにこれを押し進めて、その場の環境に同化する技術を身につけました。
その代表が「コノハムシ」です。
彼らはからだを葉っぱそっくりに進化させ、葉脈や枯れ具合までこまかく再現しています。
木々にまぎれてジッとしているので、動かないかぎり見つけることはできません。
また、「トビモンオオエダシャク」というガの幼虫は、枝に擬態するスペシャリストです。
見た目だけでなく、葉っぱを食べることでその成分を取り込み、体表面の成分も枝に似せています。
こうしたモノマネが「隠ぺい擬態」です。
基本的には天敵から隠れるためのものですが、中には獲物をおびきよせるために隠ぺい擬態をするものもいます。
「ハナカマキリ」です。
彼らはからだを花そっくりにすることで、小さな昆虫を惹きつけるように進化しました。
このように自然の中に溶け込んでいれば、敵に襲われるリスクも低くなります。
しかし、虫たちもエサを食べないと死んでしまうので、ずっと隠れているわけにはいきません。
そこで昆虫は新しいモノマネの方法を編み出しました。
それを次に見ていきましょう。
毒虫に化ける「ベイツ型擬態」とは?
小さな昆虫が大きな敵に対抗できる唯一の道具は「毒」です。
毒に当たった動物たちは、学習してその虫を食べなくなります。賢い虫たちは「これを利用しよう」と思いつきました。
つまり、自分の見た目を毒虫に似せたのです。
これを「ベイツ型擬態」と呼びます。
例えば、AとBという昆虫がいて、Aはまったく毒性がなく、Bは有毒なトゲを持つとします。
Aの見た目がBにそっくりであれば、「Bを食べるとキケン」であることを知っている動物たちは、Aも食べなくなるのです。
毒のない無害な昆虫たちはこうして生存の道を模索しているのですが、毒のある虫たちも他人事ではありません。
毒を持っていても食べられることはあるからです。
そこで毒虫たちもある工夫をしています。