日本では今、コロナ禍にともなう就労環境の変化により、労働者の心的ストレスが大きくなっています。
メンタルヘルスの不調は発生予防が重要とされ、専門家は以前から、ストレスへの対処力と、日頃の生活習慣との関連性を調べ続けています。
そして今回、筑波大学、森林総合研究所により、森林浴習慣が労働者のストレス対処力を高める可能性が示唆されました。
その効果は、年齢や生活環境など、個人差に関係なく見られたとのことです。
研究は、1月3日付けで『Public Health in Practice』に掲載されています。
森林浴の頻度が高いほど、ストレス対処力もアップ!
これまでの研究でも、1回数時間の森林浴でリフレッシュ効果が得られるという結果は数多く報告されています。
しかし、労働者が森林浴を習慣化した場合のストレス対処力との関連性はわかっていませんでした。
そこで研究チームは、茨城県つくば市の労働者を対象とした調査を行いました。
本調査では、2017年に実施された「第7回生活環境・職場ストレス調査」のデータを二次利用し、20〜59歳の男性3,965人、女性2,501人(計6,466人、平均年齢42.7歳)について分析しています。
森林浴習慣は、
・森林散策(ハイキング、自然観察、山歩き、山仕事、山中でのキャンプなど)に行く頻度
・緑地散歩(近くの都市公園。森林は除く)に行く頻度
を聞き込みで調べています。
また、ストレス対処力の測定については、「SOC尺度」が用いられました。
SOC尺度(sense of coherence、首尾一貫感覚)は、以下の3つから構成されます。
・把握可能感覚=困難な状況を明確に受け止められる感覚
・処理可能感=辛いことも乗り越えられると思える感覚
・有意味感=辛いことに対し意味を見いだせる感覚
これらの総得点が高いほど、ストレス対処力は高くなります。
このデータから、対象者を低SOC群、中SOC群、高SOC群に分け、森林・緑地散策の頻度との関連性を調べました。
その結果、森林浴の頻度は、
・森林散策の頻度=週1回以上が2.4%、月1〜3回が11.8%、年1〜数回が41.8%、ほとんど行かないが44.1%
・緑地散歩の頻度=週1回以上が16.9%、月1〜3回が30.3%、年1〜数回が28.7%、ほとんど行かないが24.0%
となりました。
また、森林・緑地散策の頻度が高いほど、高SOC群になる確率が有意に高くなっていたのです。
さらに、この結果は、年齢、学歴、収入、婚姻状況、居住地などの個人差や、運動・喫煙状況といった生活習慣の影響を含めても、同様の傾向を示しました。
つまり、森林浴が習慣化されている人ほど、ストレスへの対処力も高かったのです。
幸運にも、日本は国土面積の約67%が森林に占められている上、都市部での緑地施設も年々増えており、森林浴を実践しやすい環境にあります。
研究チームは今後、森林浴がストレス対処力に与える長期的な効果や、自然との触れ合いが対処力をいかに高めるかについて、明らかにしていく予定です。
参考文献
Walking in nature can boost worker productivity
森林浴習慣は労働者のストレス対処力を高める可能性がある(筑波大学、森林総合研究所)
元論文
Association between forest and greenspace walking and stress-coping skills among workers of Tsukuba Science City, Japan: A cross-sectional study
提供元・ナゾロジー
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