「スペシャリスト」を目指すことはキャリアパス上有利に働く
「ジェネラリストを育てる制度は会社にとってメリットがある」という話をしてきました。
ということは、従業員の立場からすれば「将来的に管理層へ出世していくことを目指して、ジェネラリストとしての資質を身につけることを意識したほうがいい」ということでしょうか?
実は、これは非常に難しい問題です。
というのも、「管理層に出世する人材がジェネラリストであることが多い」ことは事実なのですが、「さまざまな部門を経験してきた“ジェネラリスト人材”は管理層に出世することが多いか」となると別の話になってしまうからです。
日本の人事制度においては「専門職採用」よりも「総合職採用」の人材のほうが採用割合が多い分、限られた管理職のポストを狙って熾烈な出世競争を戦うことになります。
ゆえに、「幹部に登りつめる少数の社員」と「その他多くの平社員」とに分かれる結果となります。
この「その他多くの平社員」の側に入ってしまうと、専門職としてスペシャリティを極めた人材たちよりも社内での立場が下になる可能性が高くなります。
裏を返せば、「専門性を極めておけば(大出世とまでは行かずとも)一定の立場は確保しやすい」ということです。
特に日本の人事制度は“管理職採用”と“ジョブ型採用”を明確に区別している欧米と異なり、「専門職採用でも一定の立場までは昇進させる」傾向があるため、専門性を持つことがより有利に働きやすいのです。
さらに、同じ会社に残ることよりも「転職」や「独立」といった選択肢を選ぶ場合には、何らかの分野で専門性を持った人材のほうが圧倒的に有利に働きます。
以上のような背景から、従業員の立場で「ジェネラリストとスペシャリスト、どちらのコースを選ぶか」を選ぶ場合(はじめから会社に「幹部候補生」としての期待をかけられて各種部門を経験させてもらうケースでない限り)、基本的には「何らかの分野で専門性を極めていき、余裕があれば他の分野のことも少し学んで視野を広げておく」という選択が無難かもしれません。
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瀬本 光一
経営コンサルタント、広告技術研究家。一橋大学ビジネススクールにてMBAを取得。三菱UFJ銀行に就職後、法人営業やサイバーセキュリティ部門を経て独立。企業を対象にマーケティング分野を中心とした経営コンサルティングを展開。
文・瀬本 光一/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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