スマホやパソコンで調べ物をしていると、いろんな場所に広告が貼られているのを目にします。

中でも目につくのが、CMのように動く広告です。

これは目にはつくのは確かですが、「気が散ってウザい」と思っている人は多いでしょう。

伊サクロ・クオーレ・カトリック大学(UCSC)は今回、目線を追うアイトラッキング技術を使って、「動画広告」に対するユーザーの反応を調査。

その結果、ユーザーは過度に注意を引く動画広告を避ける傾向にあることが判明しました。

これは、動画広告が「普通の静止広告より刺激が強く、認知負荷を増大させる」ことを示した以前の調査結果を補強するものです。

研究の詳細は、2022年4月6日付で科学雑誌『International Journal of Internet Marketing and Advertising』に掲載されています。

目次

  1. 動画広告は「ユーザーの目」を遠ざけていた
  2. 動画より効果的な宣伝広告とは?

動画広告は「ユーザーの目」を遠ざけていた

本研究主任のフェデリコ・カシオーリ(Federico Cassioli)氏とミケーラ・バルコーニ(Michela Balconi)氏はこれまで、ユーザーが動画広告に対し、どのように反応するかを調べてきました。

動画広告は今や、アプリ内のマーケティングツールとして一般的になっており、静止画の広告よりもユーザーの興味を引き、購買につながる可能性が高いと考えられています。

しかし近年の研究で、ユーザーの多くは、注意が散漫になるため、動画広告にあまり興味を示さなくなっていることが示唆されていました。

これは、広告をデザインするマーケティング企業にとって重要な意味を持ちます。

「動く広告」は認知負荷が高くて、逆にユーザーが避けてしまうと判明
(画像=ユーザーは「動画広告」に目を向けたがらない? / Credit: canva、『ナゾロジー』より引用)

実際に、今回のアイトラッキング調査では、動画広告が過度に刺激的であるため、ユーザーが目を向けたがらないことが示されました。

さらに、動画広告に対するインタラクティビティ(「広告をクリックする」など、ユーザー側からの反応)には、負の効果が認められています。

つまり、ユーザーは動画広告を踏まない傾向が強く、宣伝効果や購買力はむしろ下がっていたのです。

研究チームは、これについて、「動画広告が静止画よりも強い認知負荷を課すため、ユーザーはそれを避けたがる」という以前の調査結果を証明するものと述べています。

では、動画広告に取って代わるベストな宣伝手法は何なのでしょうか。

動画より効果的な宣伝広告とは?

そこで、カシオーリとバルコーニの両氏は、マーケティング企業にとって「インタースティシャル広告」がますます有用になる可能性を指摘します。

インタースティシャル広告とは、モバイルアプリやウェブサイトで使われる宣伝手法のひとつで、画面やページの切り替え時に挿入される広告です。

これをクリックすると、リンク先の画面が別ウィンドウで一番手前にあらわれる「ポップアップ方式」で表示されます。

「動く広告」は認知負荷が高くて、逆にユーザーが避けてしまうと判明
(画像=インタースティシャル広告の例。PayPayのホームページ。 / Credit:PayPay、『ナゾロジー』より引用)

これと別に、両氏は「リワード広告」も有用性を増すと考えています。

リワード広告とは、アフィリエイト(成果報酬型)広告の一種で、広告のリンク先で、アプリのダウンロードや商品購入などの成果が発生すると、広告主から広告を表示する媒体に報酬が支払われるものです。

また最近では、ユーザーの購買記録や趣味嗜好に合わせて、適切な広告を表示するシステムも一般的になっています。

マーケティング担当者は今後、動画広告のように「こっちを見てくれ!」といった我の強いものでなく、ユーザーが心地よくスムーズに興味を示すような広告を提示する必要があるでしょう。

参考文献
Users avoid focusing on over-stimulating animated advertising, study finds
元論文
Advertising in app: a neuroscientific approach

提供元・ナゾロジー

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