筋トレを始めたばかりで右も左も分からない時期なら、指導者に言われるまま、指定された種目を指示されたとおりにやっても問題はない。最初は種目名とそのやり方を確認し、正しいフォームをしっかり身に付けることに専念したほうがいいだろう。そのうちトレーニングが習慣になり、トレーナーに教えてもらわなくてもできるようになったら、そろそろ、様々な「どうして?」の答えを探してみてはどうだろうか。例えば、どうしてその部位にその種目を行うのか、皆さんは考えたことがあるだろうか? もしノーだとするなら、この機会にぜひ知ってもらいたいというのが今回の記事の目的だ。
文:Raphael Konforti MS, CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
脚の完成度を高める2つのスクワット
身体の中で筋肉の王者と言えばやはり脚部だろう。その脚部をさらに強くたくましくするのがスクワットとデッドリフトである。この2つの種目には様々なバリエーションがあり、それをどう選択していくかが、迫力のある脚部を完成させるための秘訣と言っても過言ではない。
フロントスクワット
大腿四頭筋の特に外輪郭の筋量を増やしたいという場合は、フロントスクワットを脚の第1種目として行ってみるといいだろう。身体の正面にバーベルを保持して行うフロントスクワットは、通常のバックスクワットとはまったく感覚が異なる。その理由は、フロントスクワットとバックスクワットとでは、動作の生体力学が異なるからだ。例えば身体に対するバーの位置が違うだけで重心が変わってくる。フロントスクワットはバーベルを鎖骨の位置に保持するので、重心が前寄りになる。そのため殿筋やハムストリングへの刺激が弱まり、大腿四頭筋に刺激が集中しやすい。また、足幅の狭いナロースタンスでのフロントスクワットでは、可動域が広がるのでより深くしゃがむことができる。これも大腿四頭筋をより強く刺激してくれる。
バックスクワット
下半身全体の筋量を増やすなら、バックスクワット以上に優れた種目はないだろう。身体の背面、首の下部あたり(上部僧帽筋付近)にバーベルを乗せることで、身体のやや後ろに重心がかかる。そのためバックスクワットでは、大腿四頭筋だけでなくハムストリングや殿筋への刺激も強くなる。バックスクワットでは、深くしゃがむにつれて上体は必然的に前傾する。そのため下背部への負荷が増す。これはフロントスクワットと大きく異なる点のひとつだ。フロントスクワットではしゃがんでも上体はほぼ直立した状態で保たれるため、下背部よりも上背部への負荷のほうが強く感じられるはずだ。また、バックスクワットの場合、背中に担ぐバーの位置を低くしていけば、下背部、殿筋、ハムストリングへの刺激が強くなり、その分、大腿四頭筋への負荷は軽減される。この感覚を体感するために、担ぐバーの位置を少しずつ変えて実際にバックスクワットを行ってみよう。大腿四頭筋、ハムストリング、殿筋など、自分がより効かせたいと思っている箇所にしっかり負荷をかけるには、バーをどの位置に担げばいいかが理解できるようになるはずだ。
カーフを際立たせる
カーフは2つの筋肉によって構成されている。ひとつは腓腹筋で、その深部に位置するのがヒラメ筋だ。表層部に近い位置にある腓腹筋を肥大させると、カーフの表面に筋肉の輪郭が浮かび上がる。一方、その深部にあるヒラメ筋を肥大させると、内側から腓腹筋が押し上げられるので、カーフを巨大に見せることができる。まずはスタンディング・カーフレイズに集中して、カーフの輪郭をしっかり作っていこう。
スタンディング・カーフレイズ
解剖図を見ると分かるが、腓腹筋は短い筋肉だ。大腿骨下部の骨端に始点を持ち、そこから膝関節の裏側をまたいでアキレス腱につながっているのだが、上部と下部の腱部分を除くと、一般的に筋腹部分は短い。そのため、筋腹が収縮、伸展する距離も短いのである。もちろん、中にはカーフの筋腹が生まれながらにして長い人もいる。そういう人のカーフはよく発達していて、目を見張るようなダイヤモンドの形をしている。カーフをしっかり肥大させるなら、やるべき種目はスタンディング・カーフレイズだ。かかとをしっかり持ち上げて腓腹筋を最大限に収縮させ、かかとを下ろしてストレッチさせる。これを丁寧に繰り返すことだ。また、完全収縮したトップポジションでは一旦停止するようにしよう。スタンディング・カーフレイズは片足で行うこともできるし、マシンがない場合はブロック台の上に立ち、フリーウエイトを保持しながら行うやり方もある。