カナダの総選挙は中道左派で与党の自由党が選挙戦の中盤、保守党に世論調査で追い越され、トルドー首相は「負けたら辞任か」とまで言われたものの終盤で互角勝負となり、蓋を開けてみれば単独過半数は取れなかったものの選挙前の議席数と大差なく終わりました。正直、想定外でした。(総選挙に臨んだトルドー首相も逆の意味で想定外でしたが。)

コロナがもたらした「甘えの構造」
(画像=Zbynek Pospisil/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

ドイツ総裁選も26日に迫りますが、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟は中道左派の社会民主党に差をつけられています。メルケル首相も焦りを見せており、仮に政権交代が起きれば大変なことになる、と危機感を示しています。

その意味とは財政の緩みです。メルケル首相は厳しい財政規律をその主眼としてきました。覚えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、ギリシャ危機の際にもギリシャに財政の甘えを許しませんでした。ところが仮に左派政党になるとこれが緩むのです。これは世の常です。

カナダの場合も保守党は緊縮財政とプライマリーバランス目標を掲げました。ところが自由党は財政の発想はゆるく今の赤字改善より大盤振る舞いで危機を乗り越える、という発想です。これはアメリカの現政権にも見られたのですが、大盤振る舞いしすぎて人々がわがままになってしまったのです。

一度与えられたエサはもらえるのが当たり前だと思います。仮にドイツでもカナダでもアメリカでも保守党が「厳しい財政だからあなたにはもう、飴玉は上げられない」といえばふざけるな、と怒るでしょう。ところが中道左派はある意味「お母さん」のような優しさがあり、ちゃんと面倒を見てくれるのです。

日本は自民党がいろいろな顔を持つこともあり、コロナ補助金の大盤振る舞いでした。支払いが遅れているという報道はありますが、それでもゾンビを生んだ可能性はあります。90年代後半から00年代初頭にかけてゼネコンがバタバタと倒産しました。ところが多くのゼネコンは何らかの形で再生し、一部の企業は再上場しています。それを見た健全経営のゼネコンが「ふざけるんじゃない!俺たちは必死で努力してバブル崩壊の危機を乗り越えたのに連中は潰れても普通に生き返り、むしろ借金は減り、社員は減って身軽になっているじゃないか」と。同じ怒りはJAL再生に対して当時の全日空の社長が怒り心頭のインタビューをしていたのを覚えています。

カナダでワクチンを2度打っていないと一定の職業につけなくなります。個人的信条で受けない人は職を失うのですが、その人たちの言い分は「覚悟していた。だけどどうにかなる」です。どうにかなったのは政府がお金をばら撒いてきた今までの話でそれが無限に続くわけがありません。しかし、一度甘えると「私たち、こんなに苦しんでるのに政府は何もしない」と食って掛かるのです。これは人間がどんどん弱くなっていく典型的症状です。

私は「一人立ち」をよく主張しています、誰にも迷惑をかけず、自分の力できちんと立ち、生活をし、社会に還元する、これがあるべき姿です。しかし、「お母さん」に甘えて「よしよし」されている社会人や会社があまりにも多くなったことは世界に自問自答を求めることになるでしょう。

財政は無限にあるわけではありません。今回の感染症が収まっても次にどんな経済危機や気象の変化、次の感染症などグローバルな問題が出てくるかわかりません。その備えは今、どの先進国にもない危機的状況だということは肝に銘じるべきでしょう。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年9月26日の記事より転載させていただきました。

文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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