オーストリア、日本、ドイツの最新研究で、「デイノコッカス・ラディオデュランス」という細菌を宇宙空間で1年放置した結果、地球帰還後に生存していたことが確認されました。
実験は、ISS(国際宇宙ステーション)の外に設置された船外プラットフォームで行われ、紫外線や微小重力、激しい温度変化、乾燥状態にさらされます。
また、生き残った細菌は、コントロール群として同時に実験された地上の細菌とは異なる変化を見せたようです。
研究は、10月29日付けで『Microbiome』に掲載されました。
目次
1年間、宇宙空間にさらされても生存していた
デコボコは修復中にできた「ストレス反応」か
1年間、宇宙空間にさらされても生存していた
同様の実験は以前にも実施されていますが、研究チームは、微生物が極端な環境下で生き延びる能力を明らかにするため、再度実験を行いました。
チームは、乾燥させたD.ラディオデュランスをISSに送り、船外プラットフォームに入れて1年間、地球低軌道帯(LEO)を周回させています。
それと同時並行で、地上でも同じサンプルを1年放置させ、両者の違いを調べました。
1年後、LEOの細菌を持ち帰って水で戻したところ、地上グループより生存率は低かったものの、生き残っているサンプルが確認できたのです。
また、生き残ったLEO細菌は、地上のものと様子が違っていました。
表面が無数の小胞やデコボコに覆われ、多くの修復メカニズムが引き起こされて、いくつかのタンパク質が豊富になっていたのです。
デコボコは修復中にできた「ストレス反応」か
小胞が形成された正確な理由はまだ分かっていませんが、いくつかの仮説があげられています。
まず、細菌は、宇宙環境への曝露から急速に修復する中で極端なストレス反応を示し、そのせいで無数の小胞ができました。ストレス生成物を作り出すことで、細胞の生存率が高まったと見られます。
加えて、小胞には、栄養源の獲得やDNA転移、クオラムセンシング(集団感知)分子の輸送に重要なタンパク質が含まれており、回復後の耐性機構の活性化を誘導している可能性がある、とのことです。
ウィーン大学のテチアナ・ミロジェビッチ氏は「この結果は、生命が宇宙という過酷な環境に適応する方法について示唆を与え、地球外に生命が存在する仕組みを理解するのに役立つ」と指摘しました。
また、微生物の生存可能性は、他の天体で誕生した生命体が宇宙空間を漂って地球に到達したという「パンスペルミア説」を後押しします。
この説が真実だとすれば、生命は予想以上に宇宙にあまねく広がっているのかもしれません。
参考文献
sciencealert
livescience
提供元・ナゾロジー
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