ワールドの支援で、スムーズに事業展開できた
―1989年に退職し、独立したのはなぜですか。
重松 またしてもぶつかってしまいまして(笑)。でも1年くらい悩みました。しかし、「今後はファッションだけでなく、インテリアや食品なども包含した、トータルのライフスタイル提案をしていきたい」と思うようになっていましたし、自分でやってみたいという気持ちも強かった。それでビームスを辞めて、仲間9人とユナイテッドアローズを創業したわけです。
―設立時、ワールド(兵庫県)との共同出資で創業しています。
重松 大阪でインポートのセレクトショップなどを経営している知人に、ワールド創業者である畑崎廣敏さんを紹介してもらったのがきっかけです。ワールドは当時、「タケオキクチ」を立ち上げるなど新規事業を拡大していましたが、若者向けのメンズの小売はやったことがなく、ブランド強化の一環として、話がまとまったんですね。ビームスにいたということも評価していただきました。
―社名の由来について教えてください。
重松 ビームスの頭文字が“B”なので、「ビームスに追いつき、追い越せ」という意味を込めて、“A”から始まる社名にしたかったんですね。やりたいことに向かってまっすぐ進む矢のような集団になりたいと思って「アローズ=ARROWS」にしようとしたんですが、すでに商標登録がされていました。何を追加すればいいかと9人でいろいろと出し合いながら検討していたところ、一人が、「『矢を三本束ねれば、折れない』と言った毛利元就の故事にちなんで、ユナイテッドアローズにしたらどうか」というアイデアを出したので、採用したんです。
ヨーロッパで買い付けをするようになって、社名の説明をすると、毛利元就の話を知っている人が多くて驚きました。英国ロスチャイルド家の紋章にも同様の意味で「五本の矢」が入っているので、新しい会社だったにも関わらず目指すところを社名から理解してもらえたのはありがたかったし、とても不思議でもありました。
―2003年には、早くも東証一部上場を果たされています。今では、ベンチャーの多くがIPO(新規株式公開)を目指していますが、ユナイテッドアローズはその先駆けではないでしょうか。
重松 上場したのは、(巨額の富を得るという)ベンチャーのIPOの目的とは、だいぶ違っています。ワールドが株を公開していたこともありますが、「企業は公器であるべき」と考えていたからです。上場すれば外部の株主にもチェックされ、経営が「見える化」されると考えたのです。私自身、数社で働いてきて、個人商店のような企業も経験し、「ガバナンスの効いた企業」に渇望していたということもあるかもしれません。
提供元・DCSオンライン
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