「どこにでもあるもの」を「どこにもない売り方」で売る

@cosmeの美容スタッフは、階層別に綿密に組まれた研修を受講することが必須で、本社オフィスでは毎日のようになんらかの研修プログラムが行われているという。DXに取り組むからこそ、こういった「ヒト」の持つアナログな接客やカウンセリングの価値がそのギャップからか、より重要視されているのだ。

「データももちろん重要だが、リアルとネットをつなげる真の主役は、美容スタッフ。その『ヒト』の価値を上げていくための教育投資は、DXが進み、顧客接点が増えるからこそ、より重要性を増してくる」

「コロナでも化粧品は売れる」を体現した「@cosme TOKYO」の顧客体験とは?
(画像=人気の美容部員はまさしく販売の要。OMOが自然と展開される店内での接客の様子、『DCSオンライン』より引用)

@cosmeのDXを推進する上で遠藤氏が強調するのは「テックタッチ」と「ヒトタッチ」のバランス。ユーザーから見えない部分は「テックタッチ」で効率化を徹底する。お客から見える世界は、「ヒトタッチ」の持つ非効率な価値を最大化する。「ユーザー体験」を起点に、「テックタッチ」と「ヒトタッチ」のかけ算を最大化する方程式を考え続けている。

「コロナ禍で化粧品が売れなくなった」などとよく言われる。しかし、売り方やユーザー体験は、アイデア次第でいかようにもデザインできる――そのことを、多くの人でにぎわう「@cosme TOKYO」ほど、説得力をもって示してくれるものはないだろう。

「私たちが販売している商品そのものは、我々の店舗でなくとも同じものを買うことができる。私たちは『どこにでもあるもの』を、『どこにもない売り方』で売っている」

「どこにでもあるもの」を、いかに「どこにもない売り方」で売れるか――「DX」デジタル戦略で問われるべきはテクノロジーではなく、その覚悟なのだ。

提供元・DCSオンライン

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