”スマホ中毒”になるのは、私たちだけではないようです。

このほど、米シカゴのリンカーン・パーク動物園(Lincoln Park Zoo)は、10代の若いオスゴリラが、ガラス越しに来園者が見せるスマホ画面に夢中になっている、と報告しました。

そのせいで周りへの注意が散漫になり、仲間からの突進に気づかなかったという事故も発生しています。

スマホに夢中で仲間の突進に気づかず

米動物園でゴリラが来園者のスマホに心奪われ「スマホ中毒」になってしまう
(画像=16歳のオスゴリラ「アマレ」 / Credit: Ashlee Rezin/Sun-Times, Lincoln Park Zoo、『ナゾロジー』より引用)

問題のオスゴリラは、「アマレ(Amare)」という名のニシローランドゴリラで、年齢は16歳、体重は415ポンド(約188キロ)です。

アマレは、他の若いオスゴリラ3頭とともに暮らしており、支配的な大人のオスを含む家族グループとは隔離されています。

これは独身の若いゴリラたちが、お互いの交流を通じてコミュニケーション能力を育成する、大人になる前の重要な発達段階です。

同園レスター・E・フィッシャー猿類研究保護センターのスティーブン・ロス(Stephen Ross)所長は、「社交クラブのパーティーのようなもので、一緒にたくさん遊びますが、互いに対して攻撃性もあり、誰がグループのボスであるかを見極める」と説明します。

ところがアマレは、この大切な時間をスマホの画面に奪われ始めているのです。

「いじめ」の可能性も

ロス氏によると、アマレは、来園者がガラス越しに見せるスマホの写真やムービーに夢中になっており、その時間はここ数カ月で増えている、とのこと。

特に、アマレのお気に入りの場所が、ガラス仕切りのすぐ側であるため、今後も”スマホ中毒”に拍車がかかる危険性があります。

最初のうちは、スマホを見ることの実害もありませんでしたが、今年3月、仲間のゴリラの突進に気づかない事例が報告されました。

この突進は、若いオスの間で一般的に見られる行動で、誰がボスかを確認する目的があります。

普通は、突進される前や後にリアクションを示しますが、アマレはスマホに夢中になるあまり、突進にまったく気づかず、面食らっていたという。

これは、一人前のオスになる発育段階の妨げになり、また、仲間に注意を払わないことで、いじめの対象となるリスクもあるようです。

米動物園でゴリラが来園者のスマホに心奪われ「スマホ中毒」になってしまう
(画像=アマレとの距離を置くためロープを設置(リンカーン・パーク動物園) / Credit: Ashlee Rezin/Sun-Times, Lincoln Park Zoo、『ナゾロジー』より引用)

同園はスマホ中毒による弊害を防ぐため、最近、来園者をガラス仕切りから数メートル話すためのロープを設置しました。

ロス氏は、こう話します。

「アマレがスマホに向かう時間はどんどん増えています。

これはおそらく循環的な現象で、アマレがスマホに興味を示せば示すほど、来園者もますますスマホを見せたくなるのです。

写真やムービーの撮影を禁止するつもりはありませんが、アマレの将来の成長と幸福のためにも、ぜひ来園者に協力をお願いしたいと思っています」

ゴリラにっても、スマホは夢中になりすぎて仲間との社会生活を困難にしてしまう魔性のアイテムのようです。


参考文献

Teenage gorilla is getting too much screen time, Lincoln Park Zoo officials say

Teenage Gorilla “Addicted” To Smartphones, But Are All Electronics For Animals Bad?


提供元・ナゾロジー

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