
5)クラブ所有のスタジアムが少なすぎ問題
イタリアが改善すべきもう1つの問題は、クラブ所有のホームスタジアムの少なさである。現在セリエAで独自スタジアムを持つクラブは、ユベントス、ウディネーゼ、アタランタのみ。全20クラブ中と考えると非常に少ない。
ミラン、インテル、ローマ、ラツィオ、ナポリのようなビッグクラブが、未だに独自スタジアムを持ってないことは最も不思議だ。構築に向けて準備はしているものの、イタリア国内の政治的トラブルで話がスムーズに進んでいないという。
スタジアム構築には莫大な金額がかかるが、独自スタジアムではチケットの収入がすべてクラブのものとなる。また、スタジアムを作ることによって他のビジネス(レストラン、グッズ販売店、ミュージアムなど)も、クラブ経済の大きな武器となる。
イタリアの各町が運営するスタジアムは、1990年のイタリアW杯からほとんどリニューアルされておらず、半壊状態だ。手放す方向で進むべきだろう。

6)スーパースターの獲得がない問題
欧州大会で優勝できない、独自スタジアムもない。新型コロナウイルス問題がなかったとしても、セリエAの経済的な状況の厳しさには、ほとんど変わりがなかっただろう。
現在イタリアのクラブは、欧州のトップ選手と契約する余裕もない。2018年7月に話題となったポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(現マンシェスター・ユナイテッド)のユベントス加入以外に、世界中のサポーターに熱を与えるスーパースターの獲得はなかった。
そうなると、イタリアのサッカーを昔から追っているサポーターが離れていくだけではない。これからサッカーを好きになる人も、セリエAより多くのスターが揃うプレミアリーグやラ・リーガなどの観戦を選ぶだろう。それに伴っては、イタリア代表の人気度ももちろん下がることになる。

7)クラブと代表の人気比問題
日本ではJリーグに興味がある人より、代表チームの活躍をフォローする人が圧倒的に多いと感じるが、イタリアはその逆だ。つまり、セリエAクラブがサポーターにとっての魅力を失いつつあるなら、イタリア代表は尚更人気を失うことを意味する。
もちろんW杯やユーロ本大会は別として、代表チームによるW杯予選や練習試合などがイタリア国内で行われていても、スタジアムで観戦するサポーターはとても少ない。また、広場や喫茶店でリーグ戦の話をよく口にするイタリア人は多くても、重要でない代表戦の話はほとんど耳にすることがない。
今カタールW杯予選にしてもそうだった。予選敗退が決まった北マケドニア戦以外の試合は、それほど話題とならなかったのだ。イタリア国民の希望を背負っているのに、代表がほとんど注目を浴びないのは不思議なことだ。

8)若手のサッカー教育問題
最後の問題点はすぐにでも取り掛かるべきだ。イタリアでは、中学生以上の青年の技術的な練習をあまり重要としていない。サッカースクールは彼らのテクニックのスキルアップよりも、ひたすらフィジカルを鍛えることに力を入れている。
プロクラブの選手選びにも似たような考え方が確認できる。テクニックに優れていても、身長が低かったり体がまだ出来上がってなかったりする選手は加入できないケースが多い。さらに若手選手の加入が決まったとしても、1部でのプロデビューまでには時間がかかり、レンタルで2部3部のリーグで経験を積むしか方法がない。
しかし、このサッカー教育の文化を変えようとしている監督は少しずつ現れている。2部クレモネーゼでセリエA昇格の一歩手前まできている元アビスパ福岡のファビオ・ペッキア監督は正にそうだ。同クラブはほとんど若手の技術だけで、現在セリエBの首位に立っている。2022年1月には同監督が指導するGKマルコ・カルネセッキとMFニコロ・ファジョーリが、2部クラブ所属にもかかわらずA代表に選抜された。
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