この度、史上最大の彗星として話題になっていた「ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星(正式名称:C/2014 UN271)」の核のサイズが明らかになりました。

2022年1月8日、ハッブル宇宙望遠鏡によって、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星の写真が5枚撮影されました。

これにより推定される核の大きさは直径136kmであり、平均的な彗星の核の約50倍であることが明らかとなったのです。

そしてNASAはベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星とその他の彗星を比較した画像を公開しました。

この報告に関するアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の天文学者デビッド・ジューイット氏ら研究チームによる論文は、2022年4月12日付の学術誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

目次
史上最大のベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星とは
ハッブル宇宙望遠鏡の写真から「史上最大の彗星」の核サイズを明らかに!

史上最大のベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星とは

史上最大と言われる「ベルナーディネッリ彗星」の核を観測で確認! やはりデカかった!
(画像=DECamで撮影されたベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星 / Credit:Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/P. Bernardinelli & G. Bernstein (UPenn)/DESI Legacy Imaging Surveys、『ナゾロジー』より引用)

ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星(C/2014 UN271)は、2021年6月24日に正式に登録された彗星です。

この通称は、発見者の二人の名前(ペドロ・ベルナーディネッリ氏とギャリー・バーンスティン氏)から取られました。

世界最高峰のデジタルカメラ「ダークエネルギーカメラ(DECam)」で撮影された写真によって、その存在が明らかになったのです。

当時から「史上最大の彗星」として注目され、その大きさは100~200kmだと推測されていました。

ただ、彗星というのは氷の付いた岩石のことであり、氷が太陽の熱で蒸発したガスに包まれているため、この段階では正確なコアのサイズは不明でした。

そこで今回、研究者たちはもっと正確なデータを得るために、ハッブル宇宙望遠鏡による観測を行ったのです。

ハッブル宇宙望遠鏡の写真から「史上最大の彗星」の核サイズを明らかに!

2022年1月18日、ハッブル宇宙望遠鏡は、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星の写真を5枚撮影しました。

下記の画像の一番左が撮影された写真です。

史上最大と言われる「ベルナーディネッリ彗星」の核を観測で確認! やはりデカかった!
(画像=(左)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星, (中央)コマのコンピュータモデル, (右)核だけを残した画像 / Credit:NASA, ESA, Man-To Hui (Macau University of Science and Technology), David Jewitt (UCLA)、『ナゾロジー』より引用)

この写真だけでは光が滲んでいるので、正確なサイズが分かりませんね。

これは彗星の核が、「コマ」と呼ばれる核から噴き出たガスや塵に包まれているためです。

核のサイズを正確に測るには、核とコマをはっきりと区別しなければいけないのです。

そこで研究チームは、「コマのコンピュータモデル(画像中央)」を作成。

撮影写真(画像左)からこのモデルを差し引くことで、「核だけの画像(画像右)」を残すことに成功しました。

これを他の観測情報と比べることで、より正確なサイズや表面の様子を推定できたのです。

史上最大と言われる「ベルナーディネッリ彗星」の核を観測で確認! やはりデカかった!
(画像=彗星の模式図 / Credit:国立天文台,彗星とはどのような天体か、『ナゾロジー』より引用)

研究チームによると、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星の核の大きさは直径85マイル(約136km)であり、平均的な彗星の約50倍の大きさとのこと。

以前は、リニア彗星(C/2002 VQ94)が直径60マイル(約96km)で、「史上最大の彗星」だと考えらえていましたが、今回、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星が大幅に記録を更新しました。

またベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星の質量は500兆トンと推定されており、太陽の近くに存在する一般的な彗星の約10万倍の質量になります。

そしてNASAは、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星とその他の彗星を比較したイメージ画像を提出しました。

史上最大と言われる「ベルナーディネッリ彗星」の核を観測で確認! やはりデカかった!
(画像=ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星とその他の比較 / Credit: NASA, ESA, Zena Levy (STScI)_Hubble Confirms Largest Comet Nucleus Ever Seen(2022)、『ナゾロジー』より引用)

右から順に、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星、リニア彗星(C/2002 VQ94)、へ―ル・ボップ彗星(C/1995 O1)と続きます。

ちなみに左から2つ目は、地球から肉眼で見える周期彗星「ハレー彗星」です。

ハレー彗星と比べると、ベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星の巨大さが際立ちますね。

しかしながら、私たちが地球からベルナーディネッリ・バーンスティーン彗星を肉眼で見ることはできません。

史上最大ではあっても、地球からは遠く離れすぎているのです。

だからこそ、今回の撮影と研究によって詳細が解明されたことは、大きな発見だと言えます。

今後も「史上最大の彗星」が解明されていくのを楽しみにしたいものです。


参考文献

Hubble Confirms Largest Comet Nucleus Ever Seen

元論文

Hubble Space Telescope Detection of the Nucleus of Comet C/2014 UN271 (Bernardinelli–Bernstein)


提供元・ナゾロジー

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