コロナ禍で苦しむアパレル業界において、業績好調なのがしまむら(埼玉県/鈴木誠社長)だ。2020年2月に就任した鈴木誠社長は、高感度、高品質、低価格を兼ね備えた「強いしまむら」への原点回帰を掲げて目下、商品力に磨きをかけている。特価商品を減らして、プロパー消化を重視。その秘密兵器がオリジナル企画商品だ。プライベートブランド(PB)やキャラクターに加え、メーカーとの共同企画商品「ジョイント・ディベロップメント・ブランド(JB)」を投入、差別化を図っている(注:インタビュー実施は3月上旬)。

3期連続減収減益から業績回復へ導く

―2020年2月、コロナショック発生という多難な時期に社長に就任し、経営環境が依然厳しいなか、しまむらの業績を回復させました。

当社は20年2月期まで3期連続の減収減益でした。このトレンドに何とか区切りをつけ、再び成長軌道に乗せたいという思いで経営にあたり、21年2月期は対前期比で4%の売上増収、同65.4%の営業増益となりました。22年2月期も第3四半期までの累計で売上が同8%増、営業利益が同24.5%増で推移し、おかげさまで業績回復を実現できました。 

21年度(22年2月期)~23年度の中期経営計画「リ・ボーン」では、原点回帰を掲げ、商品力と販売力のアップに取り組んでいるところです。当面の目標は過去最高の売上、利益の達成で、具体的には23年度に国内売上高5950億円(20年度実績は5366億円)、国内営業利益493億円(同381億円)、営業利益率8.3%(同7.1%)、3年間の新規出店100店舗をめざしています。

―どのように業績回復へと導いたのですか。

まずは「どうして減収減益が続いているのか」の原因究明から着手。その結果、「お客さまの心理が変わってしまったことに気づかず、してはならないことをして、やるべきことをやらなかった」からだとわかりました。

「してはならないこと」の代表格が特価セールでした。過去の成功体験に引きずられ、「売上が厳しいと、セールでしのぐ」パターンが身に付いていた。お客さまは今や、いくら安くても欲しい商品でなければ買いません。そこでセールを縮小し、プロパー消化(値下げせずに正価で販売すること)の重視に舵を大きく切りました。

―そのためには、正価でも売れる商品づくりなどMD(商品政策)の改革が必要です。

独自性の高いオリジナル企画商品を強化しました。プライベートブランド(PB)やキャラクター商品のほか、2年前からはサプライヤーとの共同企画商品「ジョイント・ディベロップメント・ブランド(JB)」もラインアップしました。当社は、もともと仕入れがメーンでしたが、大きく方向転換したわけです。

期中追加生産で需給のバランスを取る

―急な方向転換に、商品の企画や生産がよく追いつきましたね。

当社はサプライヤーが多く、600社が登録し常時約400社と取引しています。仕入れ先が多いのは、当社のMDがリーズナブルな価格とともに、ファッション性を売りにしているからです。社内で商品を企画したり、特定のサプライヤーとだけ取引すると、商品が同質化してお客さまに飽きられやすくなるわけです。
JBではそのメリットを生かし、当社が「30代女性のカジュアルファッション」といった具合に、大枠のコンセプトやテーマを決めておき、そこにはまるアイテムをサプライヤーに考えていただくという、商品企画のスタイルにしています。

―オリジナルが増えるほど、在庫は膨らみがちになります。

在庫管理が肝になります。当社はもともと在庫を抱え過ぎないように、仕入れ量を絞っていました。一方で仕入れ商品を「売り切れ御免」にすると、チャンスロスが発生します。そこで、オリジナルについては直近2年間、売れる分だけを仕入れ、在庫が不足しそうになったら期中で追加発注して需給を一致させるジャストインタイムの在庫管理を進めてきました。

―その点では、グローバルのサプライチェーンの維持が難易度を増しています。

当社では、期中追加生産をスムーズにするため、一部では当社専用の工場ラインを契約しています。また、商品共通の生地も予め発注し、一定量を確保しています。そうすることで、期中追加発注の場合、どの商品が売れ筋になっても、生産に対応できるようにしているわけです。海外産地も、中国だけでなく、ベトナム、インドネシアといった具合に、必ず2カ国以上の生産拠点を設け、カントリーリスクをヘッジしています。