point
- ミルクに浮かんだシリアルには不思議な力によってまとまる傾向がある
- シリアル同士がまとまる力を測定することに成功した
朝食でシリアルを食べていると、ミルクの中に残ったシリアルが互いにまとまっているのを見ることがあるでしょう。ふだん気にする人は少ないですが、よくよく考えてみると、シリアルたちには不思議な力が働いていることが分かります。
例えば、湖の上を浮かんでいる複数のボートがあるとします。これらのボートがひとりでに動き出して、ボート同士がくっつくことがあるでしょうか?もちろん、そんな不思議な現象は起こりません。
しかし、もっと小さい世界では、つまりボウルの中のシリアルたちには、そのような不思議な力が働いているのです。この現象は「チェリオス効果」と呼ばれています。
ブラウン大学の研究チームは、困難とされていたチェリオス効果の力を測定することに成功しました。
研究の詳細は「Physical Review Letters」に掲載されました。
チェリオス効果とは
チェリオス(Cheerious)は、アメリカでは「シリアルといえばチュリオス」というくらい有名なシリアルの商品名のことです。
チェリオス効果とは、水面上の軽い物体同士が、互いに引力を持っているかのようにグループになってまとまる現象のことです。実際に牛乳に浮かぶシリアルが同じような現象を示すことから、そう呼ばれるようになりました。
チェリオス効果の原理については、2005年に「American Journal of Physics」で明らかにされています。チェリオス効果は重力、浮力、表面張力によって作用するのです。
まずはチェリオス効果を理解するために、シリアルに働く力を考えてみましょう。
シリアルは牛乳より密度が低いので浮きますが、この力を浮力と呼びます。シリアルは絶えず上向きに力が加わっていることになるため、水面に高低差がある場合は、水面に沿ってより高い場所へと移動するようになるのです。
また、表面張力により、水面は水平ではなく湾曲して高低差が生じることがあります。試験管の中の水面を想像すると分かりやすいかもしれません。試験管に接している部分が盛り上がるので、全体として凹型の水面になります。
この時点で、シリアルがボウルの端に集まる理由が説明できます。ボウルの端に向かって水面が盛り上がっているので、浮力があるシリアルは端に集まるのです。
では、中央付近で、シリアルたちがまとまるのはなぜでしょうか?
これには重力が関係してきます。シリアルにも重さがあるので、重力によって下向きの力が加わります。しかし、それは表面張力を崩すほどの力ではないので、シリアルは水面に浮きつつも、水面に窪み(曲線)を作ることになります。
1つのシリアルは水面に曲線をつくるだけですが、他のシリアルが近くに来ると、互いに曲線を形成し、2つのシリアルの間には水面の山が出来るようになります。その山をお互いが浮力によって登ろうとするので、相互引力が働いているように作用し、まとまるというわけです。
チェリオス効果の測定
磁石と磁場を用いて、チェリオス効果で生じる力を測定することに成功しました。測定方法は次の通りです。
シリアルのように軽いプラスチック製のディスクを作成し、水面に浮かべます。片方に磁石を装着して、周囲に電流とコイルよって磁場を発生させます。磁石入りディスクは磁力によって移動させることが可能になります。
そこに、磁石なしのディスクを投入します。二つのディスクにはチェリオス効果が生じるので互いに引き寄せ合います。
次に、電流を流すことによって、磁石ありディスクに磁石なしディスクとは逆方向の力を加えていきます。2つのディスクが離れた時の磁力を計測することで、チェリオス効果の力を知ることが出来るのです。
この測定から、非常に興味深い結果が得られました。
チェリオス効果による物体同士の引力は、その質量の二乗に比例します。
加えて、物体同士の距離が近くなれば、その引力も強くなることがわかりました。チェリオス効果が働いて、ディスクが互いに接近しているとき、ディスクは互いに向かって傾いています。
そのため、ディスクが水面をより強く押し付けることになり、結果として水面からの反発力(上向きの力)が強くなっていたのです。こうした要素がディスク間の引力の増加に繋がっているようです。
チェリオス現象は、身近で不思議な現象が物理法則の元に成り立っていることを証明しています。科学が発展するにつれて、身近で不思議な働きは、さらに解明されていくのでしょう。
Direct Measurement of Capillary Attraction between Floating Disks
reference: arstechnica / written by ナゾロジー編集部
提供元・ナゾロジー
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