新しい事実 電磁波の共振

今回の研究チームは、ニューメキシコ州にあるDunn Solar Telescope(DST)という望遠鏡の高解像度の観測を利用して、太陽の波動の研究を行いました。

60年間続く太陽の謎 表面は6000℃なのにコロナは100万℃に達する原因
(画像=ニューメキシコ州サクラメントピーク観測所にあるDunn Solar Telescope(DST)。/Credit:NSO,AURA、『ナゾロジー』より引用)

ここでは、太陽光を基本色に分解し、太陽表面に近くに形成されるシリコン、カルシウム、そして彩層(コロナの内側ある薄いガスの層)のヘリウムなど、太陽大気に含まれる元素の挙動を調べました。

すると元素の違いによって、太陽プラズマの速度の違いが明らかになり、そこから太陽の放つ電磁波の周波数をふるい分けることが可能になったのです。

これはオーケストラのような様々な楽器の合わさった音から、それぞれの楽器の音を選り分け分解する方法に似ています。

こうして得られたデータをスーパーコンピューターを用いたシミュレーションによって解析したところ、電磁波の増幅プロセスが明らかになったのです。

それによると、コロナ外層で部分的に波を反射する境界が形成されていて、それが波を補足し音響共振器のような状態を生み出していることがわかったのです。

この状態はアコースティックギターの原理などを考えると理解しやすくなります。ギターは中が空洞になっていて、そこで音波が共振されることで大きな音色を放ちます。

太陽のコロナ外層では、この様な電磁波が補足される状態が生まれていて、これが波の強度を劇的に増大させていたのでうす。

この新しい研究は、太陽の電磁波に関する新たな理解の扉を開くものだと考えられています。こうした原理が、熱源となる太陽表面からはるかに離れたコロナを高熱にする原因と考えられるのです。

これはコロナ加熱を理解するための重要なステップの1つだと、研究者たちは語っています。

ただ、まだ全ての理由が解明されているわけではありません。なぜそんな状態が生まれるのか、詳細はこれから解明されていくのでしょう。

最終更新日:2021.01.27 WEDNESDAY

公開日:2019.12.09 MONDAY

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功