鳥貴族ホールディングス(大阪府/大倉忠司社長、以下:鳥貴族HD)が3月11日に発表した2022年7月期第2四半期連結決算は、売上高は81億8400万円(前年同期は108億3100万円)、営業利益は18億5600万円の赤字(同12億1700万円の赤字)、純利益は+8億800万円(同 8億2700万円の赤字)と、減収ながら黒字を確保した(注:鳥貴族ホールディングスの前年同期<21年7月期第2四半期>は非連結決算)。

外飲み需要の縮小続くなか攻勢に出る鳥貴族HD、居酒屋業態の起死回生の一手とは
(画像=『DCSオンライン』より 引用)

コロナ前対比で単月既存店売上7%…居酒屋業態の苦難

いったん感染が落ち着いたかと思えば、次々と新型が流行する新型コロナウイルスはなかなか収束の気配を見せない。長引く流行に伴う外出自粛、自治体による営業時間短縮(時短)とアルコール提供の禁止要請は、飲食業界とくに鳥貴族のような居酒屋業態に致命的な打撃を与えている。

同グループの単月既存店売上高は、緊急事態宣言が発出中だった21年8月にはコロナ前の20年7月期対比で10%、9月には7%にまで落ち込んだ。3分の2の店舗が臨時休業に追い込まれたことに加え、残りの店舗も20時閉店かつアルコール提供を控えたことが大きく響いた結果だ。緊急事態宣言解除後は客足も徐々に戻り始め、10月には20年7月期対比で63%、11月同76%、12月には同80%まで持ち直した。ところが、1月にはオミクロン株流行に伴うまん延防止措置発令の影響で再び56%まで落ち込んでしまった。

もちろん鳥貴族HDも傍観していたわけではない。「居酒屋業界を盛り上げよう」と、関東圏を中心に串カツチェーンを展開する「串カツ田中」(串カツ田中ホールディングス、東京都/貫啓二社長)との連携企画(コラボメニュー提供、Twitter発信など)を展開した。ただし、形勢逆転までには至っていない。

21年8月に第1号を大井町店にオープンしたチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」も、現時点ではエリアでの浸透策を推進している段階で、収益の柱に育つまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

コロナ収束を見据え、新規出店を再開

上記のような状況に対応してコストコントロールに努めた結果、11〜12月は営業黒字を達成したものの、上期全体(8~1月)では前期よりさらに営業赤字幅を拡大させる結果となった。第2四半期利益概況としては、いわゆる時短協力金(2021年8〜10月分)の収入(助成金収入31億59百万円)が営業赤字をカバーし、当期利益は黒字転換した格好だ。 22年1月21日以降のまん延防止等重点措置に対応する協力金については、第3四半期以降に収益認識の見込み

この特殊な収益構造はコロナ禍の居酒屋チェーンに共通するもので、上場居酒屋チェーン8社が自治体から助成された協力金は計340億円で、実に売上高の4割に相当する。ただし、いつまでも公的支援に依存してはいられない。鳥貴族HDは第3四半期以降、どのような展望を描こうとしているのか。

下期の取り組みとして、鳥貴族HDは新規出店の再開や春メニューの提供、新規事業の強化など、コロナ収束に伴う営業時間正常化を見据えた反転攻勢に打って出る。

まずチャネル戦略では、19年7月以来となる直営店の新規出店を再開する。4月には「日比谷店」(東京都千代田区)、5月には「学園都市店」(兵庫県神戸市)がオープン予定だ。さらに来期からは未進出エリアへの出店を計画中で、まずは現地調査や物件開発を加速する。同HDの現在の進出エリアは関東・東海・関西地方に限られており、まだまだ伸びしろは大きい。

春メニューの提供では、「クリームソーダ酎ハイ」といったアルコールを控えめにしたドリンク、「さくら明太マヨうどん」や「スイートポテトパフェ」など、見た目や食べ方にこだわった鳥貴族ならではの新メニューを投入する。

「TORIKI BURGER」事業にも新展開がある。3月10日には2号店となる「渋谷井の頭通り店」(東京都渋谷区)をオープン。同時に記念グッズの配布や試食などのプロモーションも展開した。メニュー面でも期間限定商品や、宇治茶葉を使用した2種類(ほうじ茶・抹茶)のラテ、3種のチキンバーガーを楽しめるセットメニューなどを投入する。