ファミリーマート(東京都/細見研介社長)は3月24日、2022年度上期商品政策(MD)発表会を開催した。21年度は「SPAMおむすび」「クリスピーチキン」などのプライベートブランド(PB)商品がヒットし、既存店売上高の前年越えに寄与。また、21年3月から全国展開している同社オリジナルの衣料品ブランドの「コンビニエンスウェア」の好調を受け、今年3月からは「ソックス専用什器」の全店導入も決定。21年度の取り組みの成果と、22年度から展開する新商品群を紹介しよう。※文中の価格はすべて税込み

「SPAMおむすび」大ヒットで“看板商品づくり”に成功
ファミリーマートは20年10月に、足立光氏を初代チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)として招聘。日本マクドナルド在籍時には「夜マック」を打ち出し、同社のV字回復に貢献した大物マーケターだ。また、21年10月には「ファミリーマートコレクション」や「お母さん食堂」などのプライベートブランド(PB)を「ファミマル」として統一。複数あったPBを一つに集約することで、お客の認知度向上を図ると同時に、「クリスピーチキン」や「ファミマ・ザ・メロンパン」などの「看板商品」の育成をミッションとした商品戦略を推進してきた。
こうした取り組みの結果、ファミリーマートは21年度の既存店売上高において、8月をのぞくすべての月で、前年を上回った。好調をけん引したのは、おにぎりや揚げ物をはじめとする中食商品だ。
特に売れ行きが良かったのが、21年8月にリリースした「SPAMおむすび」で、販売開始から約1か月で400万個、約4か月で累計販売1000万個を突破した。9月には、不動の人気を誇る「手巻シーチキンマヨネーズ」を抜き、米飯カテゴリーにおいて販売金額で1位を獲得するほどの人気ぶりだった。同社取締役専務執行役員商品本部長の塚本直吉氏は、「21年度は『おむすび』カテゴリーにおいて3月を除くすべての月で前年度を越える売上を記録した。これはひとえに『SPAMおむすび』の好調による」と説明する。(「おむすび」カテゴリーの売上は対前年比8%増)

さらに、21年3月から発売している「クリスピーチキン」は、2日間で200万食を突破し、一時は品切れになるほどの好調で、フライドチキンのカテゴリーにおいても、4月をのぞくすべての月で前年度の売上を超えた。(「フライヤー」カテゴリーの売上は同5%増)
ヒットの背景に「ペルソナを細かく設定したマーケティング政策」
「SPAMおむすび」や「クリスピーチキン」などのヒット商品が生まれた背景として、商品開発とモニタリング評価のプロセスを変更し、新たな仕組みを構築したことが挙げられる。特にマーケティングにおいて、「子持ちの30代女性」や「60歳以上の男性」など、ペルソナを細かく設定し、それぞれの顧客層ごとにマーケティング部門の人員を充てた。そのことでより深く顧客のニーズを掘り当てられるようになった。
さらに、「ファミマアプリ」などの自社メディアやSNS、テレビなどのマスコミでの情報発信の強化も売上の伸長に貢献したという。「(情報発信は)これまでのファミリーマートにおいて弱かった部分。足立CMOの就任を機に、ペルソナごとにどの媒体で発信すればお客様に商品を知ってもらえるかを徹底的に分析した。結果として、情報発信力が大きく改善し『ファミマル』の認知度が向上。売上増加につながった」(塚本氏)
幅広い層のお客に対応するのも、同社の新しいマーケティング政策のミッションの一つだ。
これまでの同社のメーン顧客層は、20~50代の男性だったが、少子高齢化、女性の社会進出に伴い、今後はシニアと女性層への訴求を強化していく。「コンビニエンスウェア」や中食商品の拡充をすることで、これらの層に対応する考えだ。21年度は、結果として「30~50代の女性」の売上比率が0.6%、「60代以上」が同0.5%アップした。(20~50代男性は、21年度49.1%、20年度50.1%)