都区内マンション価格は高騰を続け、中古でも5000万円を超える水準で高止まりしている。そうした中で、最寄り駅が同じエリアで、一戸建ての価格がマンションを下回り始めている。駅からやや離れているという条件に目をつぶれば割安に見える。

本当に一戸建ては今お買い得なのか。ユーザーの価値観も含めて、様々な角度から検証する。

都区内の新築マンションは7000万円超え

不動産経済研究所のレポートによると、2017年度首都圏の新築マンション価格は平均6000万円近くに達した。ここ5年間で1400万円近くの上昇だ。とくに23区内は7000万円を超えた(同1300万円上昇)。富裕層や高年収の共働き夫婦が狙う利便性が高い物件への人気集中が、価格を高騰させた格好だ。

リクルート住まいカンパニーの調査によると、首都圏マンション購買層の平均年収は944万円で1000万円以上も36%に達し、全体の購買力向上に寄与した(自己資金・借入ローン総額も増加傾向にあり)。共働き世帯が増加し、全体に占める割合が65%に達したことも世帯年収増につながっている。

共働き世帯は収入面で比較的余裕がある一方で、時間が無いのが悩みの種だ。ライフスタイルでの優先順位も、「仕事や通勤に便利(39%)」が「子育て・教育がしやすい(36%)」や「日々の生活がしやすい」を上回っている。

物件購入に当たっての決め手も、「価格(91%)」に次いで「最寄駅からの時間(86%)」が位置する。こうした指向を有する共働き世帯の存在が、首都圏、特に駅近マンションの人気を支えているのだ。

成約率は好調・不調判断の目安「70%」を下回る

一方で成約率は、価格高騰が影響してか、好調・不調判断の目安70%を下回る68.1%だった。販売戸数も2年連続で3.6万戸前後だ。販売ラッシュが続いた2013年の5.6万戸から落ち込みが目立つ。

今年も、消費税引き上げに伴う駆け込み需要狙いのお手頃価格物件が平均を引き下げるものの、用地取得費・建築資材・人件費の高騰で高止まりする見通しだ。

新築一戸建てが割安に?

一方、戸建ての分譲価格の上昇幅はここ数年小さいままだ。その結果23区内では、マンションより戸建ての方が割安なエリアが増加してきた。戸建てはマンションより駅から遠いケースが多く利便性では後塵を拝するが、同じ床面積で24%の価格の開き(マンション建設の多かった30市区の平均、70㎡換算)は魅力的だ。

戸建ては建築コスト面でも有利になってきた。新築マンションの建築費は2011年に比べて3割ほど上昇している。上昇要因は、マンション建築需要だけではない。東京オリンピックまで2年とちょっと、五輪関連施設建築や都市整備計画、圏央道周辺の物流施設など建設・土木案件は目白押しで、職人と資材の需給はひっ迫している。

例えばオフィスビル・マンションなどRC(鉄筋コンクリート)造りの延べ床面積は前年比プラスで推移しており、鉄筋需要は堅調だ。同時に、鉄筋工の人手不足も顕著だ。国土交通省が発表している建設労働需給調査によると、建築関連・土木関連とも、鉄筋工は7年連続で不足状態が続いている。

戸建てに多い木造の建築費はほぼ横ばい

鉄筋工だけではなく、型枠工(土木・建築)、とび工、電工、配管工、左官工と、技能工8職種すべてで職人が集まらない。こうした建設技能工は、マンション建築にはなくてはならない存在だ。一方で木造建築に携わる「大工さん」は、それほど人手不足という訳ではなく、戸建ての建築価格はここ数年ほぼ横ばいだ。

ここ数年、住まい選びには「利便性」が最優先され、だからこそ「都心の駅近マンション」が人気を集めてきた。では7000万円は「利便性」の対価として適正か、それを決めるのは購入者自身の価値観だ。一時のブームに踊らされず、自分の眼でしっかり見極めよう。

文・ZUU online編集部

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