マツダは2022年4月7日、今秋に正式発表が予定されている後輪駆動アーキテクチャーを採用するラージ商品群の第1弾、クロスオーバーSUV「CX-60」の日本仕様の概要を公開した。
マツダは2011年10月に、グローバル市場をターゲットにした新世代のクロスオーバーSUVを2022年から2023年にかけて投入することを表明していた。この新世代のSUVシリーズは新開発のエンジン縦置きのFRプラットフォームで、同時に新開発の直列6気筒エンジンを搭載すること、電動化技術もあわせて導入することになっていた。
このシリーズは日本、ヨーロッパ向けのCX-60、CX-80(3列シートモデル)、アメリカ、中国市場を想定するよりワイドボディのCX-70、CX-90(3列シートモデル)がラインアップされるが、今回公表された「CX-60」はグローバル・ミッドサイズSUVだ。
そして、この「CX-60」は日本に先駆け3月にヨーロッパでワールドプレミアを行ない、受注が開始されている。このヨーロッパで発表された「CX-60」は2.5Lの4気筒ガソリンエンジン+プラグインハイブリッド仕様「e-SKYACTIV PHEV」だ。
企業平均CO2排出量の規制が厳しいヨーロッパでは、「CX-60]のパワートレーンは最も燃費に優れ、CO2排出量が少ない「e-SKYACTIV PHEV」に絞っていると考えられる。
今回発表された日本仕様のパワートレーンは、エントリーモデルが2.5Lガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」を搭載。標準モデルが直列6気筒ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 3.3」を搭載する。
そして電動化の上級モデルとして直列6気筒ディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた「e-SKYACTIV D」、そして2.5Lガソリンエンジン(既存のSKYACTIV G2.5)と電動モーターを組み合わせたマツダ初のプラグインハイブリッドシステム「e-SKYACTIV PHEV」搭載モデルががラインアップされる。
新登場の直6ディーゼルターボは、排気量3283cc、圧縮比15.2で、従来のSKYACTIV Dに比べ圧縮比は高められている。出力は254ps/3750rpm、550Nm/1500-2400rpm。このディーゼルに組み合わされる48Vモーター(ISG)は17ps/153Nm。
直6ディーゼルではメルセデス・ベンツが先行しており、排気量3.0Lで330ps/3600-4200rpm、700Nm/1200-3200rpmを発生するが、マツダの直6ディーゼルは3.3Lであるのに出力は少し低いが、それには理由がある。
この新開発ディーゼルはピストン凹部に2段の過流を発生させるくぼみを設けるというユニークな設計で、そのくぼみの中間に高圧燃料をプレ噴射し、均一な過流混合気を2ヵ所の凹部で発生させて予燃焼をさせる空間制御予混合燃焼(DCPCI)が特長となっている。詳細は発表されていないが、過流スペースで予混合燃焼をさせることで、もともと希薄燃焼のディーゼルをよりリーンバーンが可能となり、同時に大量EGRを組み合わせることで低温燃焼を行なっているものと推測できる。この大量EGR+超希薄燃焼による運転は低中域の軽負荷時に行なわれる。なお、この直6ディーゼルの排ガス後処理システムは未公表だ。
すでにヨーロッパで発表されているPHEV、つまり「e-SKYACTIV PHEV」は、既存のSKYACTIV G2.5とモーターの組み合わせだ。2.5Lの4気筒エンジンは191ps/261Nm、組み合わされる駆動モーターは175ps/270Nmで、システム総合の最高出力は327ps/6000rpm、最大トルク500Nm/4000rpmとなっている。搭載されるリチウムイオン・バッテリーの容量は17.8kWhで、三菱アウトランダーPHEVよりやや容量は少ないが、エンジンを使用しないEV走行距離はヨーロッパWLTPモードで63kmとされている。
縦置きトランスミッションは、今回も自社開発の8速ATを採用し、通常のトルクコンバーターなしで、油圧多板クラッチにより発進、断続を行なうシステムだ。そして48Vマイルドハイブリッドの場合は油圧多板クラッチの後方にISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)、PHEVの場合は高電圧の駆動モーターをレイアウトできるようになっており、いずれの場合もモーター後方にも多板クラッチを配置した2クラッチ・レイアウトで、走行中のエンジン停止も可能になっている。
またこの8速ATで幅狭なパッケージとし、AWDの場合はトランスミッション後端にトランスファーギヤを設置し、このトランスファーから前輪駆動用のプロペラシャフトがトランスミッション右側面配置される。そして前輪駆動用のドライブシャフトはエンジンのオイルパン貫通式となっている。
またこの8速トランスミッションはFR車の常道としてフロント・バルクヘッドより後方、つまりキャビン内に位置している。
サスペンションは、フロントがハイマウント式ダブルウイッシュボーン、リヤは本格的なマルチリンクの組み合わせ。「CX-60 」の開発コンセプトは「「ドライビングエンターテインメントSUV」とされ、ドライビングプレジャーを高次元で追求している。
デザインは、「魂動デザイン・フェイズ2」の路線になっており、装飾を抑制したシンプルなフォルムと面の陰影を強調し、インテリアも和風の質感を追求。しかしプロポーションアFRレイアウトを生かしたロングノーズ、バックワード(後退)キャビンとすることで、安定感、バランス感、エレガントさを強調している。
「CX-60」のボディサイズは、全長4740mm、全幅1890mm、全高1685mm、ホイールベース2870mmで、グローバル・ミッドサイズSUVの標準的なサイズとなっている。サイズ的には三菱アウトランダー、トヨタRAV4、トヨタ ハリアーよりわずかに大きいが、ほぼ同一ボディ・クラスと位置付けられる。
もちろん今回は価格などは公表されていないが、ヨーロッパでは「e-SKYACTIV PHEV」、モデルは650万円からで、内装や装備に多くのオプション・パッケージが設定されており、中心価格帯700万円前後となっている。
日本仕様の場合は、エントリーモデルの4気筒2.5Lエンジンモデルは現行のCX-8と同等水準と予想され、トップグレードは750万円ていどとかなり幅広い価格帯になるのではないかと推測できる。
提供・AUTO PROVE
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