Point

  • 電気オーブンで、煉瓦窯で焼いたような完璧に美味しいピザを再現するための熱力学の数式が発見された
  • 煉瓦窯には万遍なく熱が行き渡るため生地を均等に焼くことができるが、電気オーブンは熱伝導率の高い金属製のトレーを使うため、火の通り方にムラが生じる
  • 230℃の温度で2分50秒間加熱すれば、電気オーブンを使っても、煉瓦窯で焼いたピザの味が再現できる

あなたがもし最高に美味しいピザを食べたいと思ったら、方法は2つあります。

1つは、ピザの本場ローマまで飛んで、煉瓦造りの窯から出てきたばかりの熱々のピザを食べる方法。そして、もう一つが、家庭用のなんてことない電気オーブンで美味しいピザを再現するため、難解な熱力学の数式を解くことです。

この数式を発見したのが、アンドレー・ヴァーラモヴ氏、アンドレアス・グラッツ氏という2人の物理学者と、食文化を研究するセルジオ・グラッソ氏という人類学者の3名。彼らは、仕事のために滞在したローマで「科学的に完璧なピザ」を一緒に堪能したことをきっかけに、’The Physics of baking good Pizza’(美味しいピザの物理学)という論文を発表しました。

The Physics of baking good Pizza

彼らがあるピザ職人から教わったのは、「煉瓦窯の物理」こそが美味しさの秘訣だということ。窯の一角で木片を燃やすことで、湾曲した壁と石製の底に万遍なく熱が行き渡り、生地をあらゆる方向から均等に焼くことができます。330℃に熱した窯で2分間焼くと、1枚の完璧なマルゲリータの出来上がり。ピザ職人の中には、木製やアルミニウム製の鋤(すき)を使って生地を30秒ほど持ち上げることで、ピザに熱放射を加え、底が焦げないようにするという技を使う人もいるそうです。

とはいえ、一般の家庭で煉瓦窯を所有することはハードルが高すぎます。しかし、安心してください。「物理」の力を使えば、家庭用の普通の電気オーブンで本場のピザの味を再現できるのです。

ヴァーラモヴ氏らが熱力学の数式を用いた結果、230℃の温度で2分50秒間加熱すれば、電気オーブンでも煉瓦窯で焼いたピザの味が再現できることを証明しました。

ただし、ピザ職人と同じように、水分量の多い野菜などをトッピングとして追加した時は、水分の蒸発によって生地がより多くの熱を吸収するため、長めに加熱した方が良いとのこと。

「完璧なピザ」が焼ける数式を物理学者が発見! 本場の味が家庭でも再現可能
(画像=Credit: arXiv / 煉瓦窯の熱力学をもとに導き出された、電気オーブンでピザを美味しく焼くための数式、『ナゾロジー』より引用)

通常、電気オーブンでピザを焼く時、私たちは生地を金属製のトレーに乗せます。金属の熱伝導率は煉瓦と比べるとかなり高いため、生地の底はそれ以外の部分よりもずっと速く熱を吸収します。もし、煉瓦窯と同じように330℃で2分間焼いてしまったら、ピザは丸焦げの「炭」になってしまいます。したがって、金属の熱伝導率を考慮した加熱時間で焼けば、電気オーブンでも窯で焼いた味が再現できるというわけです。

「完璧なピザ」が焼ける数式を物理学者が発見! 本場の味が家庭でも再現可能
(画像=Credit: arXiv / 各時点におけるピザと煉瓦窯の温度を示したグラフ。加熱から60秒後に、ピザの表面が100℃に到達する(赤い丸で囲んだ点)。、『ナゾロジー』より引用)

コロッセオの側で餌を狙う鳩たちに囲まれながら味わう、出来立て熱々のピザの完璧さには及ばないかもしれませんが、ヴァーラモヴ氏らの編み出した数式は、家庭で本場の味に近づけるヒントになりそうです。さっそく、自宅のオーブンで試してみたいですね。

via: livescience, dailymail / translated & text by まりえってぃ

提供元・ナゾロジー

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