現実にデジタル情報を投影する「AR(拡張現実)」は、ますます身近なものとなっています。
しかしARを楽しむには、スマホやゴーグルなどの「大きめのデバイス」を介さなければなりません。
そこでアメリカを拠点とするベンチャー企業「モジョ・ビジョン」は、ARコンタクトレンズ「モジョ・レンズ」の開発を続けてきました。
そして最近、モジョ・ビジョン社は、モジョ・レンズの新しいプロトタイプを発表。
ここでは、プロトタイプの性能と、ARコンタクトレンズの実現がどれほど近づいたのか解説します。
目次
拡張現実を身近にするARコンタクトレンズ
ARコンタクトレンズのプロトタイプが発表される
拡張現実を身近にするARコンタクトレンズ
モジョ・ビジョン社は数年前からARコンタクトレンズ「モジョ・レンズ」の開発を続けてきました。
これは、現在ゴーグルやスマホで実現しているARの機能をコンタクトレンズに収めようというもの。
モジョ・レンズが完成するなら、大きなデバイスからは解放され、今よりも手軽にARを楽しめるでしょう。
例えば、ランニング中に自分の心拍数やコースを目の前に映し出すことが可能。
山登りやドライブでも、いちいち手に地図をもつ必要はなくなります。
またゴルフ中には、目の前に投影される情報(飛距離やスコア)をいつでも確認できるようになるでしょう。
しかしARコンタクトレンズの開発は簡単ではありません。
ゴーグルやスマホとは異なり、粘膜に直接装着するデバイスとなるので、高い安全性と装着感が求められるからです。
さらに、それらを実現するには、ディスプレイや通信・電源などをコンタクトレンズサイズに収まるよう小型化しなければいけません。
そのためモジョ・ビジョン社は、慎重にモジョ・レンズの開発を続けてきました。
そして最近、新しいプロトタイプが完成したことを報告。
ARコンタクトレンズ開発における重要なマイルストーンに到達したようです。
次項では、ARコンタクトレンズが現在どの程度まで実現しているのか解説します。
ARコンタクトレンズのプロトタイプが発表される
モジョ・レンズのプロトタイプにはいくつかの機能が備わっています。
例えば、モジョ・レンズの中核をなすのは、世界最小・最密度ディスプレイです。
現在プロトタイプには、1インチ(2.54cm)あたり1万4000ピクセルの「マイクロLEDディスプレイ」が備わっています。
これにより、文字や画像、高解像度動画を着用者の網膜上に投影可能。
屋内・屋外に限らず、目を閉じた状態でも、それら映し出された情報を確認できます。
またプロトタイプには、レンズ用にカスタムされた5GHz無線機も組み込まれており、ARに必要な通信が可能とのこと。
さらにARを実現させるには、目の動きに合わせてAR画像を静止させなければいけません。
そのため目の動きを追跡する加速度計や磁力計も搭載されています。
そしてバッテリーは、医療用バッテリーメーカーと協力し、レンズ外側のリングに十分安全を配慮して内蔵されました。
加えて私たちが特に気になるのは、コンタクトレンズに必要な酸素透過率(酸素を通す割合)や装着感でしょう。
その点、プロトタイプには、空気が入り込むような特殊なチャンネルが組み込まれており、酸素が角膜に供給されるようになっています。
また電子回路が含まれていない「同じ形状のレンズ」の装着テストによって、現在装着感や快適性が確かめられているとのこと。
さて、このようにプロトタイプの性能を知ると、ARコンタクトレンズの完成は近いように思えます。
しかしモジョ・ビジョン社マーケティング担当のスティーブ・シンクレア氏は次のように述べました。
「今後、さまざまな状況でもそれぞれの機能が正しく働くか、安全性を保てるか、といった点を確認しなければいけません。
最終的には、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得なければいけないでしょう。
そして、それまでにどれだけの時間がかかるのかは、考えたくもありません」
ARコンタクトレンズの開発は確実に前進していますが、私たちが実際に装着できる日はもう少し先のようですね。
ARを気軽に楽しめる「モジョ・レンズ」の完成を楽しみに待ちたいものです。
参考文献
We Have Reached A Significant Development Milestone with Mojo Lens
Looking Through Mojo Vision’s Newest AR Contact Lens
提供元・ナゾロジー
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