微妙なケースは一度弁護士に相談するのもアリ ~法律相談の使い方〜

ぽな: YouTube動画などの削除申請は自分でもできますが、それはそれでリスキーですよね。最近、実際には著作権侵害ではなかったのに、そうだと信じて削除申請をしたら相手から逆に損害賠償請求を食らったという事件もありました。

河野: 微妙なケースもありますので、アクション起こすかどうか迷った時点で一度、「これ、著作権侵害になりますかね?」って弁護士に訊いてみるのもいいかもしれませんね。

ぽな: うーん、そうですね……でも先生、一般人にとって弁護士さんに相談するってめちゃくちゃハードル高いですよ。「どうやって弁護士さんを探せばいいの?」「法律相談って何するんだ」みたいなところからスタートするクリエイターさんが大半だと思います。

たとえば、自治体で無料法律相談をやっているケースもありますが……。そういうところに行けばいいんでしょうか。

河野: うーん……。これ、弁護士業界の人間として言うんですけど、自治体の法律相談会は、相続や離婚といった一般的なトラブルの扱いに長けた弁護士が来るところなんですね。実際に相談に来られる方も、そういったトラブルで悩まれているケースがほとんどです。つまり、自治体側も弁護士側も、著作権トラブルが来るなんて思っていないというか。

ぽな: あらら……。となると、自分で著作権トラブルに慣れた弁護士さんを探して、直接法律事務所に相談に行った方がよさそうですね。どうやって探せばいいんでしょう。

河野: この記事を読んでくださっているみなさんはスマホやパソコンを使っているはずですので、まずは検索エンジンで探すのが手軽かな、と思います。「著作権 弁護士」などのキーワードで検索をかけてみてはどうでしょうか。

ぽな: 弁護士を探すのも、普通にインターネットで検索をすればいいんですね。ところで、法律相談って1回あたりおいくらくらいなんでしょうか……?

河野: だいたい、1回あたり5,000円~1万円くらいでしょうか。30分5,000円を目安に、あとはかかった時間に応じて、というイメージでいらっしゃるといいと思います。

ぽな: 5,000円で不安が解消できるならアリですよね。ちなみに当日の持ち物ってどうすればいいんでしょうか?

河野: そうですね。たとえばスクショだとか、ご自身で集めた証拠があると思いますので、そちらを持参していただけるとスムーズですよ。

弁護士費用は? 請求できる金額は? ~著作権侵害と法的措置のリアル〜

ぽな: 相談してみて、「これは著作権侵害だ。法的措置を取りたい」となった場合はどうすればいいでしょうか。

河野: これはケースバイケースですね。必ずしも裁判しなくちゃいけない、というわけではないんですよ。

「問題となった画像などをただ削除してもらえばいい」という場合は、内容証明を送って終わり、ということも結構多いです。ただ、相手が匿名だった場合は、発信者情報開示請求をしなければいけないこともあるので、ちょっとややこしいですね。

ぽな: なるほど。損害賠償を求めて徹底的に裁判などで戦う場合はどうでしょうか? 費用面の負担が気になる方も多いと思うんですけど、ぶっちゃけ収支って……?

河野: 相手が法人だったり、ガッポリ儲けていたりする場合は、弁護士費用を差し引いても黒字になる場合が多い印象ですね。

ぽな: ええと、とするとあの、相手が個人で特に商売もしていない場合は……?

河野: 正直、黒字にするのは厳しいと思いますよ。というのも、実際に請求できる金額って、相手がどれだけ儲けたかによるところも大きいんですよ。相手が不当に得た利益を吐き出させる、というのが基本的な考え方なので。

ぽな: そっか、じゃあ相手が海賊版のグッズをがんがん作って、がんがん売ってくれた方が最終的にがっつり回収できるということになるんですね……。

河野: 「自分の収支」という点だけで考えれば、そういうことになるでしょうね。

ぽな: では、精神的な損害についてはどうでしょうか。大切な作品をパクられたらつらいので、私なら慰謝料は1000万円ぐらい欲しいんですが。

河野: うーん、相場がありますから、1000万円はさすがに難しいですね。10万円くらいかな……。

ぽな: じゅ、じゅうまんえん……! ちょっ、泣いてもいいですか……。

自分の大切な作品を守るために、正しい知識を身に着けて

今回はトラブルに遭った後の話を中心にしてきましたが、巻き込まれた後の心労や金銭的な負担を考えると、被害に遭わないに越したことはありません。

被害を未然に防ぐための予防策としては、河野先生曰く、「著作権侵害されたら法的措置を取る」「著作権フリーではない」といった内容を、みんなの目に触れる場所に表示しておくことが大切なのではないか、とのことでした。

みなさんが安心して仕事に打ち込めるようにと心から祈りつつ、本稿の筆を置こうと思います。

文・ぽな/提供元・Workship MAGAZINE

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