Point

■共同体の構成員は、全体の公益のために「協力」しなければならないという基盤を持つ
■その「協力関係」の上で、世界中のすべての文化に共通する7つの道徳的ルールがある
■ミクロネシアのチューク民族では、「盗み」が許されているが、これは「勇敢であること」というルールの一つであると考えられる

人類の歴史は、異なるコミュニティー間における戦争の歴史でもあります。

争いは国や地域、民族による文化的背景や力関係、道徳的価値観の違いが引き金になることが多く、すべての文化に共通するルールなど無いように思えます。

しかしオックスフォード大学の人類学研究チームの調査で、世界中のあらゆる文化に共通する「7つの道徳的価値観」が存在することがわかりました。研究の詳細は、2月8日付けで「Current Anthropology」上に掲載されています。

Is It Good to Cooperate? Testing the Theory of Morality-as-Cooperation in 60 Societies

チームは調査方法として、世界中のおよそ60の社会的コミュニティーに属する600以上の文化的データを収集。同種の研究においては、今までで最大のサンプル数となっています。

そこでまず明らかにされたのは、「コミュニティーの公益のために、構成員が互いに協力しなければならない」という前提となる価値観です。研究主任のオリバー・スコット・カリー氏によると、7つのルールは共同体の「協力」を前提として成り立っているとのこと。

そして、カリー氏は、世界中の民族や社会についての膨大な文献資料をまとめた「Human Relations Area Files (HRAF=フラーフ)」というデータベースを詳しく分析しました。そこから、導き出された普遍的ルールが以下の7つです。

1.家族を助けること

2.共同体のメンバーを助けること

3.贈り物には、返礼をすること

4.勇敢であること

5.目上の者を敬うこと

6.話し合いの内容は、コミュニティー内で共有すること

7.私有財産、を尊重すること

以上7つのルールは、どんな文化や民族間においても道徳的に「善いこと」だとされていたのです。

これに反した共同体を軽視するような行為は、どの国や文化でも道徳的に「悪いこと」だと見なされています。家族や仲間への裏切り、不敬な態度、臆病や窃盗は許されていません。

しかし、珍しい例外も存在します。例えば、ミクロネシアのチューク民族の社会では、盗みは称賛に値する行為なのです。というのも、チューク社会において、私有財産は権力の象徴でもあります。そのため、「盗み」は他人の権力に脅かされていないことを示す行為として認められています。

ただ、カリー氏は、チューク民族の好戦的な成功について「勇敢であることの一形態であり、まったく例外というわけでもない」と指摘しています。

文化的によって生活様式や考え方は違えど、根本的な道徳的価値観には人類に共通するものがあるようです。この結果を受けて、同氏は「民族紛争や社会的不和が生じたときは、文化的相違面ではなく、共通する面に目を向けてほしい」と話しています。

提供元・ナゾロジー

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