目次

  1. 13年間で炭素換算330億トンの二酸化炭素を吸収していた
  2. 吸収された二酸化炭素が海水を酸性にする
海は人類が排出したCO2を3割も吸収していたと判明
(画像=、『ナゾロジー』より 引用)

Point
■海が人工的に発生した二酸化炭素をかなり吸っていたことが海洋調査により判明
■2000年前後の13年間で炭素330億トン分を吸っていた
■温暖化抑制にはなるが、海水の酸性化による問題がある

私たちには、地球温暖化を人知れず抑制する強い味方がいたようです。

1994年から2007年までの13年間で、大気中から海へ炭素換算でおよそ330億トンの二酸化炭素が取り込まれていることが分かりました。これは気象庁気象研究所と海洋研究開発機構を含む、世界17機関による共同研究により判明しました。

この量は、同じ時期に人の活動で発生した二酸化炭素量の約31%にあたり、海の二酸化炭素吸収が地球温暖化を大きく抑制してきたことを示しています。

この世界17機関による共同研究の論文は科学雑誌「Science」に掲載されています。

The oceanic sink for anthropogenic CO2 from 1994 to 2007

13年間で炭素換算330億トンの二酸化炭素を吸収していた

地球温暖化の原因とされる、人為的に発生した二酸化炭素は、その全てが大気中に放出されるわけではありません。例えば、一部の二酸化炭素は光合成により植物に吸収されます。もう一つが海です。海面を通じ二酸化炭素は海水に溶け込み、その海水が循環することで海中に長く保存されます。

研究チームは1994年から2007年までの間の、「人の活動により発生した二酸化炭素の吸収による、海中の二酸化炭素増加量」を評価しました。50回を超える世界各地への調査航海で得られたデータによると、炭素換算で330億トン分もの量の二酸化炭素を海は吸収していました。

さらに、大気中の二酸化炭素濃度が急激に上昇すると、それに合わせて海の吸収する二酸化炭素の量も増えます。これは産業革命の頃から続いているようです。しかし、これがいつまで続くのか、どのタイミングで吸収量が減り始めるのかは分からず、研究者たちは将来的な吸収量の減少を示唆しています。

吸収された二酸化炭素が海水を酸性にする

しかし、「大気中の二酸化炭素が海に吸収されることで減少したので安心」…ということでもないようです。

海水は弱アルカリ性でpHはおよそ8ですが、二酸化炭素が取り込まれると炭酸水のように酸性寄りになります。この問題は海洋酸性化という別の問題として知られています。

海は人類が排出したCO2を3割も吸収していたと判明
(画像=Credit:pixabay、『ナゾロジー』より 引用)

海洋酸性化で危惧されている生物として、カルシウムが体に関係しているサンゴやウニなどが挙げられます。海中の酸性化により体のもととなる炭酸カルシウムが不足したり、炭酸カルシウムでできた既存の骨格に悪影響を及ぼしたりする可能性があるからです。

大気中の二酸化炭素が少なくなっていたとしても、別の所で問題が起こってしまうのでは本末転倒ですね。

海がせっせと二酸化炭素を吸っているというのに人間はロクなモン吸ってないなぁ…(とぼけ顔)

reference: mri-jma.go / written by 白大根

提供元・ナゾロジー

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