宿泊地に到着後、翌日から再び元気に歩き出すために大切なのは、やはり休息だ。山中の掛け布団たるスリーピングバッグの良し悪しは、睡眠の質を大きく変える。
スリーピングバッグ(寝袋/シュラフ)は、中綿の種類によって大別される。ダウンと化繊である。両者を部分的に使い分けているものもあるが、まだそれほど多くはない。ともあれ、下の説明でそれらの特徴を把握し、まずはどちらの中綿を選ぶのかを考えよう。
その次に、それぞれの寝袋に設定されている「適応温度帯」を検討する。体力を消耗している山中では、普段以上に寒さを感じる人が多く、自分が想像する温度帯よりも1ランク上のものを選ぶのが購入時のコツ。夜に寒さを感じたとき、たとえ着替えを足したところでそれ以上に暖かくするのには限度があるが、暑いときは寝袋のファスナーを開けば内部温度は下がり、寝苦しさは解消できるからだ。
ダウンタイプ
ダウンは、使用時のボリューム感に対して、圧縮時はコンパクト。つまり、軽量かつ少量の中綿でも暖かい。ただし濡れに弱く、暖かさが激減する。現在は撥水性ダウンもあるが、近年のダウンの価格の高騰もあって高価になりがち。品質はフィルパワー(FP)で表され、700以上くらいが高品質の目安だ。
ナンガ/オーロラライト350
防水透湿性の表地で雨の日も気楽に使える
【DATA】
価格:34,000円
適応温度目安:~5℃
収納サイズ:13×25cm
ダウン:760FP
重量:750g
問合せ先:ナンガ
高品質なダウンを包み込むのは、オーロラテックスという防水透湿性の生地。そのためにダウン製品でも水に強く、テント内の結露や雨水で多少濡れても保温力が低下しないのはありがたい。足元はボックス状に立体化させたデザインで高さがあり、足首まわりが窮屈ではない。
イスカ/エア150
高品質のダウンを使い、軽量なのに暖かい
【DATA】
価格:19,000円
適応温度目安:~8℃
収納サイズ:11×19cm
ダウン:800FP}
重量:370g}
問合せ先:イスカ
対応温度は8度が目安と、夏の低山を中心に活躍するモデル。重量は370gしかなく、収納時の大きさもコンパクトなので、日帰りときのエマージェンシー用として持ち歩いたり、他の寝袋に合わせて保温力を増したりと、アイデア次第でいろいろな使い方ができそうだ。
モンベル /ダウンハガー900#5
寝袋にはあまり使われない900FPという高品質ダウン
【DATA】
価格:37,000円
適応温度目安:~8℃
収納サイズ:12×24cm
ダウン:900FP
重量:374g
問合せ先:モンベル
多種多様な寝袋をそろえるモンベルの製品のなかで、もっとも高品質のダウンを使用。重量増になる原因のサイドのファスナーは腹部までにとどめ、軽量性を追求している。ストレッチ性がある表地も好評だ。このシリーズは対応温度域を4段階にわけ、これがいちばん薄手だ。
シートゥーサミット/アセントAcI
バッフルを縦と横に配置し、より暖かく、機能的に
【DATA】
価格:38,000円
適応温度目安:~−4℃
収納サイズ:18×18×30cm
ダウン:750FP
重量:860g
問合せ先:ロストアロー
ダウンが封入されるチューブ状の部分はバッフルといわれ、多くのモデルは横方向。だがこのモデルは暖かさを均一にするために上半身を縦方向とした。サイドのファスナーは両側にあり、一方は足先まで、もう一方は胸元まで。この使い分けで多様な温度に対応する。
ビッグアグネス/サンドフォッファー
断熱性が高いマットと合わせ寒い時期でも安眠できる
【DATA】
価格:29,000円
適応温度目安:~−7℃
収納サイズ:20×23cm
ダウン:600FP(撥水性)
重量:1,220g
問合せ先:ケンコー社
ダウンが封入されているのは体の正面だけで、サイドからマットを巻き込むようにして使う。重量のわりに、かなり低温まで対応できるのは、背中側のダウンを省いて軽量にしたからだ。ただし、低温下で眠るためには、断熱性が高いマットを合わせる必要があるのを、お忘れなく。
ナンガ/UDDバッグ300HD
あえてフードを省いたウルトラライト仕様
【DATA】
価格:35,000円
適応温度目安:~0℃
収納サイズ:13×25cm
ダウン:700FP
重量:625g
問合せ先:ナンガ
ウルトラライトな製品を扱う有名ショップ「ハイカーズデポ」の協力により生まれた、保温力に対しての軽量性を実現したモデル。肩から下だけを覆うフードのない構造で、足元はスリムと、できるだけ使用素材を減らしている。開いて使えば涼しく、暑い時期にも有用だ。
マウンテンイクイップメント ヘリウム250
体にフィットするフォルムで暖気を無駄にしない
【DATA】
価格:28,500円
適応温度目安:~1℃
収納サイズ:23×18×15cm
ダウン:700FP
重量:705g
問合せ先:アクシーズクイン
肩付近は幅を広めにとりながら、そこから足元にかけてはかなりタイトに絞り込んだシルエットで、ぴったりと体を包み込むような形状。人によっては少々狭さを感じるかもしれないが、体のまわりに余分な隙間が生まれないので、暖気が外部へ逃げにくいのは大きな長所である。
モンベル/ダウンハガー800ハーフレングス#3
軽量に作った半身モデル。ダウン封入は腹部以下のみ
【DATA】
価格:19,000円
適応温度目安:~3℃
収納サイズ:12×24cm
ダウン:800FP
重量:439g
問合せ先:モンベル
フード部分もある一般的な寝袋に比べ、ダウンが封入された部分の長さは2/3程度。上半身に防寒着を着て保温力を補うという発想で生まれたモデルだ。同レベルの寝袋と比べて収納時のかさばりや重量も2/3程度になり、肩まで薄い布地のシェルで覆われ、体からのズレは少ない。
ゼログラム/Tuokumne SUL
開け閉めしやすいフロントのファスナー
【DATA】
価格:45,000円
適応温度目安:~1.4℃
収納サイズ:30×19cm
ダウン:850FP(撥水性)
重量:470g
問合せ先:ユゼン
フロント中央にファスナーがあり、それに沿うように縦のバッフルを付けたユニークなデザイン。このファスナーはWタイプで一部だけ開くこともでき、暑いときは暖気をすぐに逃がせる。ダウンは850FPの高品質で撥水加工も施してあり、水濡れにも安心だ。
マウンテンイクイップメント/ウィメンズ ヘリウム400
女性の体のラインに合わせ、無駄のないデザイン
【DATA】
価格:35,000円
適応温度目安:−3℃
収納サイズ:23×19×17cm
ダウン:700FP
重量:845g
問合せ先:アクシーズクイン
男性より身長が低い人が大半である女性に合わせ、適応身長を同社の男性用より15cm短い170cmに設定。その分だけ軽量で、持ち運びが楽になる。ひと目でわかる特徴は腰元で絞られたシルエット。これは女性の体の曲線に沿って体にフィットし、保温力を向上する。
マウンテンイクイップメント/ヘリウムキルト
広げて使えるブランケット。サイドを留めて寝袋にも
【DATA】
価格:24,000円
適応温度目安:~5℃
収納サイズ:24×11×10cm
ダウン:700FP
重量:510g
問合せ先:アクシーズクイン
広げれば幅150cm近くになるブランケット、サイドをスナップボタンで留めて折りたためば封筒型の寝袋に。寝袋にして使った場合、サイドに隙間が空くので保温力は一般の寝袋ほどにはならないが、他の寝袋と組み合わせるなど、多様な使い方ができる。暑い時期に向いたモデル。
エクスペド/ハイパーキルト
ブランケットにフード?類を見ないユニークな形状
【DATA】
価格:32,000円
適応温度目安:~2℃
収納サイズ:1.8リットル
ダウン:800FP
重量:515g
問合せ先:アクシーズクイン
サイドをマットの下に巻き込んで使ったり、そのままブランケットのように体にかけたりして使える、おもしろいルックス。フードがあるので、寒い時期は頭部を覆い、防寒性を高めることもでき、見た目以上の機能性だ。ギア好きの方ならば、一度は試してみたくなるだろう。
シートゥーサミット/エンバーEbI
マットと組み合わせて使う無駄を省いた形状
【DATA】
価格:32,000円
適応温度目安:~10℃
収納サイズ:13×13×24cm
ダウン:850FP
重量:420g
問合せ先:ロストアロー
裏側はコードで結ばれているだけで、広げるとブランケットのような形状で使えるタイプ。寝袋の内側にマットを挟み込んで使うことで保温力と寝心地がアップするように考えられた設計だ。保温力の面では無駄になりがちな背面のダウンを省くことで、想像以上に軽量である。
ニーモ/カユ30
「サーモギル」という工夫で暑苦しくない夜を
【DATA】
価格:36,000円
適応温度目安:~−1℃
収納サイズ:36×19cm
ダウン:800FP(撥水性)
重量:740g
問合せ先:イワタニ・プリムス
胸元にうっすらと見える青い部分は、サーモギルと呼ばれるスリット。ファスナーで開閉でき、蒸し暑い夜はあらかじめ空けておくことで、寝袋の保温力をあえて下げることができる。ダウンには撥水加工が施され、さらに濡れやすい足元は防水透湿素材と、濡れにも強い。
化学繊維タイプ
化繊の中綿の特徴は水濡れへの強さで、多少濡れていても一定の暖かさを保つ。また、中綿がつながっているため、表地が破れても外に漏れない。ダウン並みの保温力に近付いているものもあるが、まだまだダウンほど軽量コンパクトではない。だが、安価なものが多いのはうれしい点。ラフにガンガン使える。
ゼログラム/ネバーマインドプラス
緩やかなフォルムで暖かい時期でも快適に
【DATA】
価格:31,000円
適応温度目安:~3.8℃
収納サイズ:24×19cm
中綿:プリマロフトゴールド
重量:999g
問合せ先:ユゼン
フードの部分がかなり広く、頭部や顔まわりに余裕を持った作り。そのために暖かい時期も寝苦しくなく、それほど寒い時期に使うことは想定していない設計だ。中綿のプリマロフトゴールドは完全に濡れても60%以上の保温力をキープするといわれ、悪天候時でも最悪の事態を避けられる。
モンベル/アルパインバロウバックサーマルシーツ
他の寝袋と合わせても単体でもいい「シーツ」
【DATA】
価格:11,500円
適応温度目安:~13℃
収納サイズ:14×28cm
中綿:エクセロフト
重量:612g
問合せ先:モンベル
他の寝袋のなかに入れて保温力を高める目的をもつため、名称は「サーマルシ-ツ」。だが実際は一般の寝袋とほぼ同様の構造を持ち、暑い夏場はむしろこれだけを単体で使うと心地よい。化繊の中綿の製品は水濡れや圧縮に強く、汗ばんだ体で汚れたときは、すぐに洗濯できるのもいい。
スナグパック/スペシャルフォース1
ときには軽量性よりも強靭さを重視
【DATA】
価格:26,000円
適応温度目安:~0℃
収納サイズ:16×16cm
中綿:ソフティープレミア
重量:1,200g
問合せ先:ビッグウイング
コットンのような素材感を持つパラテックススチールプレートという表地には、なんとメタルが織り込まれ、非常に丈夫。裏地も宇宙服レベルで体温をキープするという特殊な生地だ。天然のダウンと似た構造の中綿を使用しており、湿気にも強い。
OMM/マウンテンレイドPA1.0
ウェアとのコンビで全身を保温する
【DATA】
価格:24,500円
中綿:プリマロフトゴールド
収納サイズ:16×11cm
重量:235g
問合せ先:ノマディスク
お尻から足先の保温に特化した半身サイズ。荷物の重さを減らすために、上半身に着た防寒着の力を利用して全身を保温するという発想で、重量235gに抑えている。とくに同社のインシュレーションウェアとはスナップボタンで連結でき、使い勝手がよい。
マウンテンイクイップメント/スターライトⅡ
首元を念入りに保温する化繊中綿の代表的なモデル
【DATA】
価格:18,000円
適応温度目安:~−2℃
収納サイズ:22×21×29cm
中綿:ポーラロフト
重量:1,400g
問合せ先:アクシーズクイン
シート状にした数枚の中綿を少しずつずらしながら重ね、コールドスポット(温度が低くなる部分)をなくすようにした構造。中綿は少量でも暖かなプリマロフトで、撥水性が高い表地で覆われている。防水性を高めたい頭部や
足先は、生地の縫い目を減らしている。
ドイター/オービット±0°
ブランケットとしても使える応用力
【DATA】
価格:12,500円
適応温度目安:~0℃
収納サイズ:21×44cm
中綿:ハイロフトホローファイバー
重量:1,400g
問合せ先:イワタニ・プリムス
サイドのファスナーが足先まで延び、完全に開ければブランケットとしても使用が可能。撥水性が高い表地には縫い目が少なく、水にも強い。女性の体に合わせて長さを抑えたものも用意され、そちらは上半身と足元にフリースを張り、さらに保温性が高い。
ファイントラック/ポリゴンネストイエロー
保温材は中綿ではなく、特殊なシート状
【DATA】
価格:34,800円
適応温度目安:~3℃
収納サイズ:17×30cm
保温材:ファインポリゴン
重量:695g
問合せ先:ファイントラック
使用されている保温材は中綿ではなく、化繊のシート。シートを重ねることで暖気をキープし、収納時は小さくつぶれて圧縮できる。乾きが速いのも売りのひとつだ。首元にはマフラーのようなチューブがあり、内部の暖気を逃がさず、暖かく眠れる。
イスカ/アルファライト300X
値段の安さにも驚く、タフに使える定番品
【DATA】
価格:12,000円
適応温度目安:~6℃
収納サイズ:14×27cm
中綿:マイクロライト
重量:640g
問合せ先:イスカ
つぶれにくくて暖気をため込みやすい中綿のマイクロライトを使い、表地は丈夫なポリエステル。足元が立体的で狭苦しくなく、裏地も肌触りがよい。とはいえ、化繊なので多少重く、かさばるのは否めないが、この価格ならば納得できるはずだ。
ニーモ/ケヤン35
劇的に小さくなった収納時のサイズ
【DATA】
価格:21,000円
適応温度目安:~2℃
収納サイズ:39×20cm
中綿:プリマロフトシルバー
重量:765g
問合せ先:イワタニ・プリムス
特許出願中という特殊な中綿構造であるフェザーコアにより、これまでの同等の寝袋に対して、40%も収納時のかさばりを抑えた画期的な製品。体に沿う細身のシルエットだ。胸元には暖気をため込まない仕組みのサーモギルがあり、夏も活躍する。
カバー&ライナー
寝袋に合わせて使うカバーやライナー。快適性を上げるのに貢献する可能性も。
近年は寝袋の表地の性質がアップし、撥水力が高く、暖気を逃しにくいものになっている。以前ほどカバーの必要性は薄れているが、やはり+αの効果は得られるので、ひとつ用意するのもいい。内側で保温力を増すライナーもあり、すでに所有している寝袋では寒い場合に利用すれば、より暖かいものに買い直す必要がなくなるかもしれない。ここでは紹介していないが冷涼感を増すライナーもあり、好みによっては試してみるのもおもしろい。
モンベル/タイベックスリーピングバッグカバー
【DATA】
価格:5,800円
収納サイズ:9×5×19cm
重量:155g
問合せ先:モンベル
軽量でいて強靭、透湿性をもつタイベックのカバー。この素材に完全な防水性はないが、保水しにくく、寝袋の保温力を高めながら、テント内部の結露程度は防いでくれる。
シートゥーサミット/サーモライトリアクター
【DATA】
価格:5,200円
収納サイズ:10×10×16cm
重量:248g
問合せ先:ロストアロー
サーモライトという保温力の高い中空繊維のライナー。寝袋の内側に合わせると、8度も体感温度を上げる効果を発揮する。自分の寝袋の保温力が心配な人は追加で持とう。
※価格は全て税別表記、2019年3月現在の価格となります。
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
提供元・FUNQ/PEAKS
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