成功したのは運のおかげ。自分を肯定できない「詐欺師症候群」と「ジェンダー」の関係
(画像=『ナゾロジー』より引用)

Point
・自分の成功を「自分の実力」と肯定できない「詐欺師症候群」に関する研究が行われた
・「女性」よりも、詐欺師症候群の傾向がある「男性」に心理的プレッシャーをかけるとパフォーマンスが低下することが判明
・この結果は「男性は有能であるべきだ」という性への固定観念が影響していると考えられる

「詐欺師症候群(インポスター症候群)」という心理的傾向をご存じでしょうか?

これは、せっかく大きな成功を収めたとしても、自らの成功を肯定できずにただ運が良かっただけと思ったり、自分は他人ほど能力がないと感じる傾向をいいます。症候群と名前がついていますが、あくまでもこれは心理的傾向。誰にでも大なり小なりこの傾向があることがいえ、この傾向は男性よりも女性に多いと言われています。

アメリカとドイツの研究者による「詐欺師症候群」と「パフォーマンス」に関する最新研究から、詐欺師症候群の傾向は「女性」よりも「男性」のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがわかりました。

Are all impostors created equal? Exploring gender differences in the impostor phenomenon-performance link

研究では、数百人の男女に対し2つの実験が行われました。

1つ目の実験では、学生に対して「言語」や「計算」に関する5つの問題を2セット続けて実施。1セット終了時に研究者らは、半分の学生に「1セット目の回答が全て不正解だった」と嘘のフィードバックを与えてプレッシャーをかけました。

これにより詐欺師症候群の傾向の強い男女は、ふつうの人よりも「やっぱり自分には実力がないのだ」と思い込んでしまうことになります。

成功したのは運のおかげ。自分を肯定できない「詐欺師症候群」と「ジェンダー」の関係
(画像=『ナゾロジー』より引用)

実験の結果、「男性」の方が詐欺師症候群傾向により、プレッシャーを受けたときの負の影響が強いことが分かりました。彼らは自分の無能さに強い不安を抱え、課題への取り組みが消極的になり、パフォーマンスが低下しました。対照的に、「女性」は取り組みが積極的になり、より高いパフォーマンスを発揮しました。

また、2つ目の実験では、学生に同じ5つの問題を解かせ、半分の学生に対して「その成績を所属するコースの教授に知らせる」と伝えて強いプレッシャーを与えました。これにより「男性」は不安が大きくなり、積極性がなくなってパフォーマンスが低下。一方「女性」の場合はパフォーマンスへの大きな影響は見られませんでした。

成功したのは運のおかげ。自分を肯定できない「詐欺師症候群」と「ジェンダー」の関係
(画像=『ナゾロジー』より引用)

研究者は、「この傾向には、文化的な性的役割が関係していると考えています。男性は、有能であることが社会的に価値があると考え、同時に自らが高い水準を達成できないと考えることに強いプレッシャーを感じるために、実験において消極的な反応を見せたと考えられます」と述べています。また、「女性」については有能よりも「優しくあるべき」という文化が背景にあり、パフォーマンスに関する制約がないために影響が少ないことが考えられます。

この一連の研究により、「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」といった、社会的性差である「ジェンダー」の存在が浮き彫りになったといえます。

特に「謙虚」といわれる日本人には顕著に表れそうなこの「詐欺師症候群」という傾向。とりわけ「男性」に対して過度なプレッシャーを与えるのはやめてあげましょう。きっと逆効果になっているはずです。

提供元・ナゾロジー

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