ブラック企業では、残業代未払いやパワハラなど、日々たくさんの問題が起こっています。
ブラック企業を辞めたいと思うとき、多くの人が「辞めるにせよ、もらうべき残業代はもらいたい」、「パワハラの被害に遭ったのだから泣き寝入りはしたくない」などと思うでしょう。
今回は、ブラック企業を訴える際の相談窓口について解説します。
この記事を読むことで、
- ブラック企業を訴える場合の4つの窓口
- それぞれの窓口の特徴
- ブラック企業を訴えて得られるもの
- ブラック企業を辞めて転職する際ステップ
について理解することができます。
現在ブラック企業にお勤めで、近々退職を検討している方や、ブラック企業を辞めることは決めていないけれど問題を解決したいと思う方に、ぜひ読んでいただきたい内容です!
目次
ブラック企業を訴える場合の4つの相談窓口
ブラック企業を訴える際に必要な証拠とは
ブラック企業を訴える場合の4つの相談窓口

ブラック企業で働きながら「これって明らかに法律違反なのでは?」と感じながらも、どこに相談していいか分からず、そのままただひたすら耐えている人はきっと多いでしょう。
ですが、思い切って訴えるとなったとき、どこに相談すればよいかを知っておくことで安心感にもつながります。
ブラック企業を訴える際の相談窓口は大きく4つです。
それぞれにメリットもあればデメリットもあるため、もしものときに備えて全ての機関の特徴をここで理解しておきましょう!
1.労働基準監督署
労働基準監督署は、「労働基準法違反」について相談することができる、厚生労働省管轄の機関です。
「労基」「労基署」などと呼ばれることもあります。
労働基準監督署では、
- 企業に労働基準法違反が疑われる場合に調査に入る
- 企業に労働基準法に従うよう勧告する
以上2つの対応が可能です。
ダルマちゃん 労働基準監督署はブラック企業に勤務する人たちが相談先として選ぶ機関の中で最も一般的な選択肢と言えるよ。
しかし、労働基準監督署に相談することのデメリットとして、
- ハラスメントや慰謝料請求などの民事的な争いに介入できない
- 労働基準違反について勧告できても強制力がないため確実性に欠ける
以上2点が挙げられます。
相談に行く価値はもちろんありますが、企業が認めなければ調査に入られてもそのまま問題が解決されずに終わる可能性は常にあります。
2.労働局
労働局もまた、労働基準監督署と同じく厚生労働省管轄の機関です。
労働基準監督署が労働基準法違反に関わる問題に対応する機関であるのに対し、労働局は幅広い問題に対応します。
労働局では例えば以下のような問題に対処することができます。
- パワハラ・セクハラなどのハラスメント全般
- 会社での人間関係のトラブル
- 不当解雇
- 合理性のない配置換え・転勤・出向
- 合理性のない減給
「労働基準監督署に相談したけれど、何もしてもらえなかった」というケースはよく耳にしますが、これは主に労働基準法違反として認められなかった場合に起こります。
労働基準監督署では、労働基準法違反以外のトラブルに対処する権限がないため、問題があると認識できても、それ以上の行動を起こすことができません。
労働局では、法律違反にあたらない上記のトラブルにも対応することが可能で、料金も一切かからない点は非常に嬉しいポイントです。
ダルマちゃん でも、労働局には企業が話し合いに応じることを強制する法的な権限はないんだ。
ユーくん なるほどね。企業が話し合いを拒否したり、話し合いをしても合意に応じなかったりすれば、結局問題解決には至らないんだね。
3.労働組合
労働組合という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
労働組合については、法律上以下のように記載されています。
「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。
引用:厚生労働省ホームページ「労働組合法」
ダルマちゃん ちょっと分かりづらいでしょ?労働組合っていまいちピンと来ない人も多いと思うんだ。なぜなら全ての企業にあるわけじゃないからね。
労働組合は誰でも作ることができます。
2人以上の組合員さえいれば、「労働組合」を名乗ることはできるのです。
多くの会社には「労働組合」がすでに存在しており、企業によっては1つの企業に複数の労働組合がある場合もあります。
さらに、労働組合は同じ職種や業種で働く人たちが、企業の枠を超えて組織しているケースもあります。
ユーくん なるほど、いろんな形があるんだね、労働組合って!
ブラック企業に勤める場合、問題が生じても相談できる労働組合自体が会社に存在しない場合が多々あります。
このような場合には、企業外の「ユニオン」と呼ばれる合同労組に入ることで、問題について労働組合に相談することが可能になります。
- 合同労組とは
- 企業別組合を組織しにくい中小企業労働者が、一定地域ごとに個人加盟原則によって加盟できる労働組合をいいます。ユニオンは合同労組の一種。
労働組合の強みは「団体交渉が可能になる」点にあります。
労働組合に相談することで、労働組合が団体交渉を武器に企業に圧力をかけることができるのです。
労働組合は団体交渉権の他に団体行動権を持っています。
団体行動権とは、企業に要求を飲ませるために行動する権利のことを言います。
団体行動を起こすことで、会社側は「企業の評判を落とされるわけにはいかない」と、労働組合の求める要求(未払い賃金の支払いなど)を飲まざるを得なくなります。
ユーくん なんだかすごく頼もしいね!相談窓口としては良さそう!
ただ、労働組合を相談窓口にすることに関しては、メリットばかりではなくデメリットもあります。
- 労働組合の会費がかかる
- 問題解決後に解決金がかかるケースがある
- 組合によって実行力やサポートレベルにばらつきがある
- 労働者よりも企業を守るスタンスの労働組合もある
このように、労働組合にはデメリットもある点は理解しておく必要があります。
4.弁護士
ブラック企業で働いたことで何かしらの損害を被った場合、それに対して会社に責任を取らせる場合には弁護士に相談する方法もあります。
弁護士に依頼することの最大のメリットは「訴訟に必要な法的な準備や手続き」を任せることができる点でしょう。
法律のエキスパートである弁護士だからこそ、裁判を起こして勝つためのアドバイスをすることができるということ。
もちろん、弁護士に依頼をするには費用がかかり、その費用は決して安くはありません。
おまけに裁判を起こして勝訴するにせよ、それまでに1年以上の期間がかかるケースも少なくないため、長期戦を覚悟の上依頼する必要があります。
ダルマちゃん 裁判で勝って損害賠償を会社に支払ってもらうことは決して簡単なことではないんだ。それまでに長い道のりがあるんだよ。
ブラック企業を訴える際に必要な証拠とは

どの機関に相談するにせよ、あなたが訴えたい被害を証明するための証拠が必要になります。
この章では、ブラック企業を訴える際に必要となる証拠を、トラブル別に紹介していきます。
今後ブラック企業を訴える可能性がある方は、早い段階で証拠集めに取り掛かっておくのが賢明です。
1.パワハラ・セクハラ
パワハラやセクハラの被害は、特に証拠を提出するのが難しいと言われています。
「こんなことを言われた」、「あんなことをされた」という口頭での説明は、証拠不十分で認められないことがほとんど。
実際に嫌がらせを受けたことを証明するためには、以下のものを証拠として残しておく必要があります。
- 嫌がらせの内容が分かるメール
- スマホやレコーダーなどで録音した会話
特に音声を録音するのはハードルが高いように感じますが、メールなど文字で残っていない場合、録音された音声が非常に重要な証拠となるため、残しておくことを強くおすすめします。
2.残業代未払い
ブラック企業では残業代未払いの問題が非常に多く見られますが、中でも厄介なのが、残業した記録が全く残らないケース。
タイムカードを定時で切るように言われている場合などは、記録上では「残業がなかった」とされてしまいますが、この場合も諦める必要はありません。
- メールや電話の履歴(時間が分かるもの)
- パソコンのログイン・ログオフの時間を記録したもの
- 会社が入っているビルの入退館記録
これらがあれば、少なくとも「この時間まで仕事をしていた」という証明にはなります。また、上記のような証拠が集められない場合には、自分でスマホやノートに勤務時間を記録しておくようにしましょう。
3.解雇や降格などの不当な処分
不当な解雇や降格などの処分を受けた場合には、それらが起こった理由を書面で残しておきましょう。
解雇に関しては、法律で「解雇理由証明書」の発行が義務付けられているため、発行されない場合には、自分から会社に証明書の発行を依頼することができます。
労働基準法第22条
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
引用:厚生労働省ホームページ「労働基準法」
ダルマちゃん 証明書は請求すればかならず交付するように決められているんだ。だからこればかりはブラック企業も言い逃れはできないよ。
降格処分を受けた場合については、証明書の交付などが義務付けられていません。
この場合降格処分を下した理由を具体的に聞き、可能な限り書面で残すようにしましょう。
書面で残すことができない場合に備え、口頭で伝えられる際に会話を録音しておく方法もあります。
準備を万端に備え、できる限り証拠となるものを残しておくことが重要です。