国土交通省が2022年の地価公示価格を発表した。全国平均と三大都市圏平均いずれも、住宅地と商業地は2年ぶりの上昇、工業地は全国平均で6年連続の上昇となった。

一方で、東京都区部の商業地に関しては、都心3区(千代田区、中央区、港区)のみが、前年比マイナスとなった。このエリアは繁華街や高額賃料のオフィスが多く、新型コロナウイルスの影響が大きいためだ。コロナ禍前は、インバウンド消費や企業の旺盛な賃貸ニーズの恩恵を大きく受けており、その反動という側面もあろう。

今回の地価公示で全国的に見られる特徴は、次の三つである。

一つ目は、繁華街等で店舗の収益性が回復していないエリアや、銀座や梅田、すすきのなどの高額エリアで地価下落が継続していること(ただし、いずれも下落幅は大幅に縮小)。二つ目は、リモートワークや移住、国内のレジャー需要などで、熱海や軽井沢などの別荘地の地価が上昇していることだ。

最後に、地方有力都市の周辺都市で、相対的割安感から需要を喚起し、地価が上昇していることである。北海道北広島市は、札幌市内への交通の便の良さから、22年の公示地価の上昇率が全国1位を記録した。

このように各地で変動が見られる一方、東京のマンション価格はいわゆるアベノミクスのスタート期から、ほぼ一本調子で上がり続けている。

図表は、東京における中古マンション価格指数の00年以降の推移である。コロナ禍においても前年同月の価格指数を下回った月はなく、21年12月の指数は12年11月から48%も上昇している。要因としては、歴史的低金利の継続、パワーカップルの台頭、外国人投資家のプレゼンス向上、建築資材や人件費の高騰によるマンション供給価格(新築価格)上昇などが挙げられる。現状、これらの要因のうち陰りが見える、あるいはその恐れがあるのは、外国人投資家のプレゼンス、パワーカップルの購買力あたりだが、まだ価格形成に大きな影響を及ぼすほどではない。

図表には、日経平均株価の推移も示した。これを見ると、日経平均がマンション価格にやや先行しており、両者に相関関係があることが分かる。現在は、ウクライナ危機で株価が乱高下しているが、日経平均が2万5,000~2万6,000円のゾーンに長くとどまるか下回るような事態に至れば、マンション価格も追随して下降トレンドに向かう可能性が高まると筆者はみている。裏返せば、東京の中古マンション価格下落のトリガーは、もはや株価の大幅下落といった外的要因程度だろう。

東京都の中古マンション価格は今後も強含み
(画像=『きんざいOnline』より引用)

文・賀藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表(不動産鑑定士・CMA) / 賀藤 浩徳
提供元・きんざいOnline

【関連記事】
通貨主権を奪われず、競争に勝つためのCBDCの議論を進めよ
中国景気を加速させる3つのエンジン
オンライン診療の恒久化に向けて安全性と信頼性を向上させよ
個人消費の増加基調を映す乗用車登録台数
マーケットはまだ「経済の正常化」を織り込んでいない