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情報空間の「衰退」は目に見えない
Facebookだっていつかは終わる
情報空間の「衰退」は目に見えない
2005年、イギリスのウィルトシャー出身の学生であったアレックス・テューに、素晴らしいアイデアが降ってきた。
そのコンセプトは、1000×1000の格子状に配置された100万ピクセルの広告スペースで構成されたウェブページを、1ピクセル当たり1ドルで販売するといった驚くほどシンプルなものだ。すべて売れたときには彼はミリオネアになっているといった算段もついていた。
テューはそのアイデアに基づき、2005年の8月、「Million Dollar Homepage」と呼ばれるウェブサイトを立ち上げた。
口コミや、メディアで注目されたこともあり、立ち上げから1ヶ月が少し過ぎた頃にはすでにサイトは250,000ドルを集めた。
2006年の1月には最後の1000ピクセルがオークションにかけられ、38,100ドルで落札されました。こうして、テューは本当にミリオネアの夢を実現させたのだ。
立ち上げからおよそ15年が経った現在でも、サイトはオンライン上に存在している。今でも毎日数千のビューワーが訪れるそのサイトに対して、1度だけ広告費を支払ったYahoo!をはじめとした多くの団体は、非常に良い投資をしたといえるだろう。
しかし、サイトの中のおよそ40%の広告はリンクが古く、死んだサイトへと飛ばされる。「Million Dollar Homepage」は、初期のインターネットの衰退が目に見えないことを示すいい例だ。
オフラインの世界では、もしローカルの新聞がなくなるとなれば、そのことは広く報道される。しかし、オンラインのサイトはしばしば何の報告もなしに更新が停止されてしまい、そのサイトを訪れて真っ白なページと対面したときに初めて、サイトが死んでいることに気がつくのだ。
Facebookだっていつかは終わる
サイトが古くなってアクセスできなくなれば、そこにあった情報には永遠に触れられなくなるのかといったら、そうでもない。イギリスでは、そうしたアーカイブの仕事が一部、大英図書館に委ねられている。大英図書館は2004年から許可を得て、ウェブサイトの記録を収集しているのだ。
アーカイブ事業のマネージャーであるジェイソン・ウェバー氏は、「最初にインターネット・アーカイブがスタートしたのは1996年です。それは、最初のウェブページが立ち上げられてから5年後の出来事になります。その時代に生きたウェブページからコピーされたものは何もありません」と語っている。
私たちは、SNSに投稿した自分のポストが、常にデジタル上で生き続けていると考えている。しかし、かつてアメリカで最もポピュラーなウェブサイトであった「MySpace」が、12年間記録してきた音楽と写真のうちいくらかを失ってしまった事件は、大きなサイトに蓄積されたデータであっても決して安全ではないことを私たちに教えてくれている。
それは、あのグーグルが運営するサービスであったとしても同じことだ。Facebookに対抗して立ち上げられたSNSサービス「Google+」は、4月2日にサービスが終了している。
ウェバー氏は、「写真をFacebookに投稿しても、それをアーカイブしたことにはなりません。Facebookだっていつまで続くか分からないのです」と語ります。
もし「Webサービスの短命さ」を疑うというのであれば、「Million Dollar Homepage」を少しの間訪問してみるといいだろう。そのサイトは、オンラインのサービスがいかに速いスピードで廃れていくのかを示す「遺言」のようなものであるといえる。
情報空間に存在している無限にも思える膨大な情報について、私たちは当たり前のように、それが永遠に存在し続けると思ってしまいがちですが、それを「保存する作業」がなければ、いつか失われてしまうのは当然です。とはいえ、ついつい「目に見えないもの」の存在を軽視してしまうのが人間というものなのかもしれません。
提供元・ナゾロジー
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