卵から孵化したばかりのウミガメは、待ち伏せていた海鳥に捕食されないよう急いで海に駆け込みます。
しかし、ウミガメの最大の天敵は、海鳥でなく人間です。
現在、世界各地で卵の密猟が相次ぎ、中央アメリカでは実に9割の卵が盗まれ、食用として違法売買されています。
この犯罪を止めるため、イギリス・ケント大学の研究チームは、GPSを仕込んだニセ卵「InvestEGGator」を開発しました。
10月5日付けで『Current Biology』に掲載された報告によると、ニセ卵を密猟者に盗ませて、密売のネットワークを暴くことに成功しています。
目次
ホンモノそっくりの”ニセ卵”を犯人に盗ませる
GPSから密売ルートの特定に成功!
ホンモノそっくりの”ニセ卵”を犯人に盗ませる
ニセ卵「InvestEGGator」は、環境保護学者のキム・ウィリアムス=ギレン氏により数年前に考案されました。
中にはGPSが内蔵され、1時間ごとにシグナルを発信して居場所を知らせてくれます。また、見た目や手触りでバレないよう、外観・質感ともにホンモノそっくりに作られています。
研究チームは、このニセ卵を101個用意し、密猟の多いコスタリカのビーチ4ヶ所に設置しました。
ウミガメの卵は1ヶ所にまとめて産卵され、密猟者は大抵その全部を盗むので、ニセ卵は巣ごとに1個だけセットしています。
その結果、設置したニセ卵の内、約25%が密猟者によって盗まれました。
盗まれた卵の種類には、ヒメウミガメとアオウミガメが含まれており、いずれも絶滅が危惧されています。
GPSから密売ルートの特定に成功!
研究チームの目的は、卵を盗んだ密猟者の特定だけでなく、密売ルートを追跡して、違法売買のネットワークを暴くことです。
そして、数日間におよぶ追跡調査の末、5つの密売ルートの特定に成功しました。
最も短いルートは、盗まれた海岸からほど近い住宅地で、もう一つは、海岸から約2キロ離れた地元のバーでした。
最長ルートは、海岸から137キロも離れたコスタリカ・セントラルバレーにあるスーパーマーケットの積み込み湾で、追跡に2日を要しています。
食用にされるウミガメの卵はスーパーでは販売されないため、積み込み湾は、業者と売り手の間の受け渡し場にすぎないと考えられています。
これとは別に、ニセ卵が残っている巣では、他のウミガメが正常に孵化したことが確認できました。
研究主任のヘレン・フィージー氏は「今回の実験では、ニセ卵の電波が発生中の胚にダメージを与えることなく作動できるかが重要な確認事項でした」と述べています。
人類がウミガメの卵を食用にしてきた歴史は長いですが、人口が増えるのとは対照的にウミガメの数は年々減っています。
この事実を無視して密猟や密売が続くと、ウミガメはますます絶滅に追い込まれてしまうでしょう。
「InvestEGGator」は、ウミガメを救うための希望の卵でもあるのです。
参考文献
sciencealert
smithsonianmag
interestingengineering
提供元・ナゾロジー
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