Point

・気候変動による酷暑や干ばつによって、世界のビール消費が「16%」低下する可能性がある
・ビールの主原料である「大麦」の生産に大きな影響が出るため、地域によってはビールの価格がおよそ「2倍」に跳ね上がることが予想される
・最も大きな影響が出る国は、世界で最もビールが消費されている「中国」であると考えられる

地球温暖化の影響は、私たちの飲食物にまで及んでいます。これまでの研究で、気候変動の「ワイン」や「コーヒー」といった飲料への消費量の影響が語られてきましたが、最新の研究が、その影響が「ビール」にまで及ぶことを明かしています。

Decreases in global beer supply due to extreme drought and heat

イギリスの国立大学であるイースト・アングリア大学が行なったこの研究では、酷暑などの異常気象が、ビールの消費量とどのようにリンクしているのかについて調査が実施されました。

研究の中で想定されたのは、最も厳しいレベルの干ばつや猛暑。そして試算の結果、そのような状況下において世界規模でビールの消費量は「16%」低下する可能性があることが判明しました。これは、リットルに換算すると「290億リットル」に値し、アメリカで年間に消費されるビールの消費量と同程度となります。

「とりあえず生」がNGに? 地球温暖化が深刻な「ビール不足」を引き起こす可能性
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

気候変動により問題となるのは「需要」ではなく「供給」です。それほどの大きな気候変動が起こってしまえば、ビールの主な材料である「大麦」の生産に大きな影響が出てしまいます。これは、2022年までに7,500億ドルに届く勢いのビール市場にとって大きな痛手であり、もちろん消費者にとってもバッド・ニュースです。また、これによりビールの値段が2倍に跳ね上がることも考えられます。

また、特に影響を受ける国は、世界で最もビールの消費量が多い「中国」とのこと。もし明日にでもひどい猛暑や干ばつが中国を襲えば、同国のビール消費はおよそ「10%」落ち込み、「120億個」の缶ビールが姿を消すこととなるでしょう。

ビール不足によって価格が高騰してしまえば、労働者階級にとってはビールが「ぜいたく品」となってしまうかもしれません。買い物袋を有料化したり、プラスチックストローの使用を止める飲食店も増えています。私たちも居酒屋で「とりあえず生!」と言う前に、気候変動について何か行動を起こす必要がありそうです。

提供元・ナゾロジー

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