先日、2020年の小中高生の自殺者数が479人(前年の41.3%増)と過去最多を更新したニュースが日本で報道され、話題になりました。

自殺原因は、進路の悩み・学業不振・親子関係の不和など様々でしたが、自殺に踏み切る心理状態には何か共通する点があるのでしょうか。

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校はこのほど、「自殺リスク」と「時間感覚」との間に関連性があるかを調査。

その結果、自殺未遂者は、主観的な時間経過が遅く感じられることが判明しました。

時間感覚の遅延が、脱現実・離人症の状態に追い込み、自殺願望を増幅させている可能性があるとのことです。

研究は、学術誌『European Neuropsychopharmacology』に掲載されています。

目次




「時間が遅い」は危険なサイン

本調査は、成人の男女(最近自殺を試みた人57名、自殺念慮に苦しんでいる人131名、非自殺性のうつ病患者51名、心身ともに健康なコントロール群48名)を対象としています。

対象者には「抑うつ・自傷行為・衝動性・実行機能」についての評価付けと、時間感覚についての測定テストを受けてもらいました。

その結果、自殺未遂のグループは、非自殺性のうつ病患者に比べ、衝動性のレベルが非常に高いデータが出ています。

また、自殺未遂のうち、自殺について考える時間は「5分未満」「3時間以上」に大きく分かれており、後者のグループほど、時間感覚が遅くなる傾向にありました。

さらに、時間感覚の遅延は、自殺念慮の深刻度と強い関連性を示しています。

自殺を考える人は「時間の流れが遅くなっている」ことが判明(アメリカ)
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

研究主任のリカルド・カセダ氏は、この結果を受け「時間の流れが遅いという感覚は、脱現実・離人症のような心理現象を反映している可能性が高い」と指摘します。

脱現実・離人症は、現実感を喪失したり、自分が自分の心身から離れていく感覚を覚える状態であり、戦場からの帰還兵によく見られる症状です。

時間感覚の遅延は、圧倒的・圧迫的な精神的苦痛によって引き起こされ、次第に自己の無力感を悪化させて、当人を自殺に追いやる危険性があります。

加えて、自殺未遂者の衝動性の高さが問題であり、調査では、自殺に踏み切った人の約半数が、自殺を決心してから10分以内に実行しています。

以上をまとめると、自殺願望を抱くきっかけには、精神的苦痛による「時間感覚の遅延」があり、そこから自殺を実行するか否かは「衝動性の高さ」にかかっている、と言えるでしょう。

自殺を考える人は「時間の流れが遅くなっている」ことが判明(アメリカ)
(画像=Credit: pixabay、『ナゾロジー』より 引用)

カセダ氏は「本研究は、自殺の予防策を考える上で大きな一歩となります。次に取り組むべきは、こうした時間感覚の変化の根底にある脳のメカニズムを解明することです」と述べています。

現在は、コロナ禍の影響で生活の変化や個人の孤立化が進んでおり、心理的に不安定になりやすいです。

こんな時だからこそ、人の心に耳を傾け、苦痛の声に気づくことのできる社会が必要となるでしょう。

(相談窓口)

厚生労働省

mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html

提供元・BCN+R

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