サッカー世界最大の大会であるワールドカップ。その大会を1930年に行われた第一回大会からたどっていきます。
ワールドカップを振り返ることでその時々のサッカーの傾向、さらに言えば社会情勢も垣間見ることができます。
過去には交通手段が発達しておらず出場を辞退せざるをえない状況や、戦争の影響で大会が開催されない時もありました。
また、サッカーボールも大会ごとに改良が重ねられ、進化を続けてきました。
そのようなワールドカップとボールの進化の過程を振り返ります。
目次
ワールドカップとサッカーボールの歴史
ワールドカップの歴史とサッカーボールの歴史はともにあります。
ワールドカップの公式球のデザインや名称はその時開催される国のことを反映していたり、サッカーに対する思いがデザインされており、そうしたサッカーボールに込められた思いを知ることでより大会に対する興味もわいてきます。
参考記事
○1930年から2014年までW杯公式ボールを振り返ってみた
○公式ボールの歴史
【どんな大会?】
記念すべき第1回のワールドカップです。第1回はウルグアイで開催され、決勝でウルグアイがアルゼンチンを下し、見事に開催国が優勝を果たしました。
本大会は地区予選を勝ち上がってくるというレギュレーションではなく、すべてが招待チームで行われました。 しかし、遠方の国は交通の理由から出場を辞退した国もあり、参加チームは13カ国にとどまりました。
【どんなボール?】
当時の公式ボールはラテックス製の空気袋を膨らませたものを、11枚の革を縫い合わせたもので包んで紐で閉じたものでした。
イギリス製のものが使用され、サイドの革がT字型になっている「Tモデル」というボールが使用されました。
【どんな大会?】
ワールドカップは1938年から第二次世界大戦の影響により中断されており、この大会が第4回大会ということになります。 開催はできたものの、その戦争の影響もあり参加を拒否する国も少なくありませんでした。 この大会は唯一、決勝ラウンドもリーグ戦で開催された大会となり、ウルグアイの優勝で幕を閉じました。 また、FIFAが初代会長ジュール・リメの会長就任25周年を讃えて、優勝杯がジュール・リメ杯と公式に呼ばれることになった大会でもあります。
【どんなボール?】
Tossoliniというアルゼンチン企業がボールに外からは見えないバルブを付け、そこから膨らませられるようするという画期的なボールを開発しました。
ただ斬新なこのデザインはなかなかFIFAに受け入れてもらうことができずに20年もの歳月がかかりました。 そして、1950年のブラジル大会で初めて使用されるようになったです。
【どんな大会?】
スウェーデンで開催された1958年大会は、現在もサッカーの神様として讃えられるペレ選手が17歳で世界大会にデビューした大会でした。そのペレ選手の活躍もありブラジルが優勝を果たしました。 そして本大会は欧州開催の大会で南米勢が優勝した、唯一の大会となっています。
【どんなボール?】
1958年では「Top Star」というサッカーボールがコンペによって採 用され、初めてFIFAの選定ボールとしてワールドカップで使用されました。
この時のボールはは12枚か18枚の細長い革をつないで作られており、色も茶色や真っ白なものが使用されていました。 ですので、見た目は現在のサッカーボールというよりはバレーボールに近い形をしていました。
【どんな大会?】
この大会は南米と欧州以外の地で開催された初めての大会となりました。 前回大会同様、ペレ選手の活躍が目立つ大会で「ペレのための大会」とも言われました。そのペレ選手の活躍でブラジルが2大会ぶり3回目の優勝、規定により「ジュール・リメ杯」の永劫所有権を獲得しました。
また、余談ですが、その後このカップは盗難にあってしまい、次の1974年西ドイツ大会からはトロフィーの名称も現在の「FIFAワールドカップ」に変更されました。
【どんなボール?】
ワールドカップの公式試合球も1970年のメキシコワールドカップからアディダス製のものとなり、その最初のサッカーボールが「テルスター」です。 名前の由来はこの時普及し始めた「テレビジョン」と「スター」を合わせて名付けたという説や、ワールドカップを世界に放送したテルスター衛生にちなんで付けられたという説があります。
【どんな大会?】
第1回大会では準優勝をするものの、その後芳しい成績を残していないアルゼンチンにとって母国開催となる1978大会にかける意気込みは並々ならぬものがありました。 それまでのアルゼンチンはビッグクラブに所属している選手を優先的に招集していましたが、小さなクラブの選手も積極的に招集しました。 結果、若い選手中心のチーム構成となりましたが、抜擢された選手たちは期待に応える活躍を見せ、見事ワールドカップ初優勝を果たしました。
【どんなボール?】
1978年のワールドカップ開催地のアルゼンチンのタンゴ(舞踊)をイメージして作られました。 今後、このタンゴは名前やデザインは変わるものの同一シリーズとして1998年のワールドカップまで継承されていきます。 次のスペインワールドカップでは同モデルに撥水効果のあるポリウレタンコーティングを施したものが使用されました。
日本の大人気サッカー漫画「キャプテン翼」の第一巻の表紙にも描かれており、日本人にとっても馴染みの深いボールです。
【どんな大会?】
メキシコで行われた本大会はアルゼンチンが優勝で幕を閉じましたが、それ以上にマラドーナ選手の「神の手」と「5人抜き」が印象に強く残る大会となりました。 準々決勝の好カード、アルゼンチン対イングランド戦、アルゼンチンの1点目はマラドーナ選手の手に当たりゴールに吸い込まれていきました。 その後本人も手でゴールに入れたことを認めており、のちに「神の手」とわれるゴールが生まれました。 そして、その後さらにマラドーナ選手はイングランドのディフェンス・キーパーの5人を抜き去り決勝点となる2点目決めて見せました。 ワールドカップ史に残る伝説的なゴールが2つも生まれた大会となりました。
【どんなボール?】
本大会ではワールドカップで初めて人工皮革で作られたサッカーボールが採用されましたが、それが「アステカ」です。 開催国のメキシコのアステカ族のシンボルがサッカーボールにデザインされています。 本革に比べて耐久性の向上と吸水性を抑えることに成功しました。
【どんな大会?】
イタリアで行われた1990年ワールドカップはカードが飛び交う大会となってしまいました。 52試合で164のイエローカードが飛び交い、16人の退場者を出してしまいました。さらに準々決勝から決勝までの7試合では、3試合が1-0のロースコアなゲーム、流れの中から決まったゴールだけで勝負が終わったのは、わずかに1試合のみとなっています。ほかはPK絡みか、PK戦の末に勝者が決まるゲームとなりました。
このような結果を残したこの大会は「ワールドカップの歴史上において最も退屈な大会」と評されてしまいました。
【どんなボール?】
タンゴシリーズを継承しつつも、ポリウレタンを使用するなどの改良が施されています。それにより撥水性の向上とボールの動きとスピードがさらに改善されました。
開催国イタリアのイタリア半島に栄えたエトルリア文化にちなんだデザインになっていて、名前もそこから取った「エトルスコ・ユニコ」と名付けられています。
【どんな大会?】
サッカー不毛も地とも言われたアメリカでの開催となったワールドカップです。決して期待度は高くなかったブラジルがイタリアをPKで下して優勝、PK戦で「イタリアの恋人」と言われイタリアを牽引し続けてきたロベルト・バッジョが外したシーンはあまりにも有名となりました。
また、逆に優勝候補と言われていたコロンビアはまさかの予選敗退。 オウンゴールをしてしまったコロンビア代表のエスコバル選手はのちに射殺されてしまい「エスコバルの悲劇」といられ未だに悲しい事件としてサッカーファンの記憶に残っています。
【どんなボール?】
このボールもタンゴシリーズの継承モデルであり、星と星座がデザインされています。 これはボールのスピード感を表現すると同時に1994年はアポロ11号のミッション25周年だったということが由来しています。
復元力の高い白色ポリエチレンフォームの層を使用することでボール制御のしやすさと反発スピードが得ることができ、ゴール数を増加させようという狙いもありました。
【どんな大会?】
1998年はフランスで開催されました。開催国フランスが堅守を武器に次々に強豪国を倒し見事に優勝を果たしました。 この時チームの中心として活躍したのがジネディーヌ・ジダン選手でした。 卓越した技術でチームを牽引し、特に決勝戦、ブラジル相手に2ゴール決める活躍は圧巻でした(結果的に3-0でフランスが勝利し優勝)。 彼はこの大会の活躍により、名実ともに世界最高のMFとなりました。
【どんなボール?】
タンゴを継承して作られたサッカーボールで、カラーリングは赤・青・白とフランスの国旗から由来したものを採用しました。 ワールドカップでは1978年からタンゴ継承モデルが採用されてきましたが、その流れはこの「トリコロール」で一区切りとなります。
【どんな大会?】
韓国との共同開催ではありましたが、日本でワールドカップが行われた記念すべき大会です。
ホームの後押しを受け日本は今大会でワールドカップ初勝利、そして初の決勝トーナメント進出と大躍進を果たし、日本中に熱狂の渦を巻き起こしました。
共同開催国である韓国もベスト4という結果を残すなど、アジア勢の躍進が目立った大会でした。
【どんなボール?】
本大会に使用されサッカーボールは「フィーバノヴァ」です。フィーバはワールドカップに注がれる世界中の熱気を、ノヴァは新星を意味しています。 重量を減らすために軽量かつ高強度のシンタクティックフォームをボールの内側に使用することでボールの軽量化に成功しました。 しかし、軽すぎるサッカーボールに対して異を唱える選手たちもいました。
【どんな大会?】
本大会で注目を集めていたのがフランス代表のジネディーヌ・ジダン 選手でした。今大会後の引退を表明しており、世界最高の選手として君臨し続けていた彼の最後のプレーにファンも期待を寄せていました。
予選こそ本調子ではなかったものの、徐々に調子を上げていったジダン選手の活躍もあり、フランスは決勝に進出、イタリアとの決勝戦に臨みましたがそこで事件は起きました。
延長にもつれ込んだ後半の5分、あろうことかジダン選手がイタリア代表のマテラッツィ選手に頭突きをしてしまいます。 もちろんレッドカードにより退場、結果的にワールドカップ優勝も逃してしまい。華やかな道を歩んできたスター選手にはあまりにも寂しいラストゲームとなってしまいました。
【どんなボール?】
「チームガイスト」とはチームスピリットが加わることで、より強くなれるという意味です。 14枚パネルを継ぎ目を縫うのではなく熱融着させるという当時では革新的な技術で作られました。 そうすることでより真球に近い形状のサッカーボールを作り出せるようになりました。
【どんな大会?】
南アフリカワールドカップはアフリカ大陸で初めて開催されたワールドカップです。「ブブゼラ」というラッパの一種の楽器による応援が印象的な大会です 今大会ではスペインのポゼッションサッカーが世界を魅了しました。圧倒的なポゼッション力で相手を圧倒し、見事スペイン初のワールドカップ優勝を果たしています。 スペインが磨き続けてきたポゼッションサッカーに対する自信と誇りが垣間見れた大会となりました。
【どんなボール?】
この大会の公式球の「ジャブラニ」とは南アフリカ共和国の公用語で「祝杯」という意味です。 このジャブラニはお世辞にも評判の良いボールではありませんでした。
サッカーボールの反発力が強すぎてコントロールが非常に難しく、ボールを蹴った際にも予測不能な変化をしせるこのボールは、一流選手ですら扱うのに苦労していました。
【どんな大会?】
サッカー王国ブラジルで行われた大会で開催国ブラジルの躍進が期待される中、開催された大会でした。 若きエース、ネイマール選手を攻撃の中心に据えたブラジルは順当に準決勝までコマを進めます。 しかし、準決勝で悲劇は起こりました。 優勝候補の一角として挙げられていたドイツにまさかの1-7の大敗を喫します。この大敗は「ミネイロンの惨劇」と呼ばれ、開催国ブラジルにとって忘れられない大会となってしまいました。
【どんなボール?】
この大会のボールは「ブラズーカ」です。ブラズーカとは「ブラジル人の誇り」を意味します。
6枚と言う非常に少ないパネルによってサッカーボールを形成し、ボールの形状維持を向上させました。 ブラズーカのボールテストには2年半もの月日が費やされ、世界トップレベルの選手600名以上がテストを行ったデータをもとに作成されました。
【どんな大会?】
本大会ではワールドカップで初めてビデオ副審制度(VAR)が採用さ れました。 オフサイドによるゴールの有無の判定やペナルティーエリア内でのハンドの見極めなどに活用し、その後各国リーグでもこのVARが採用され始めています。
加えて注目を集めたのがフェアプレーポイントです。
予選ラウンド第3戦、日本代表はそのゲームには負けていますが、そのまま警告などを受けなければフェアプレーポイントにより決勝トーナメント進出の可能性が高いという状況に直面しました。 その時、日本代表はそのゲームには負けているにもかわらず時間を稼ぐためにボールキープすることを選択します。
結果的に決勝トーナメント進出を決めましたが、その選択には賛否両論ありました。
【どんなボール?】
新形状の6枚均一のパネルを採用することでボールバランスの向上を図りました。また、熱接合技術によりどこを蹴っても同一の反発力が生じるようにしているなど、高機能なボールとなっています。
このボールは始めてワールドカップの公式球である「テルスター」のインスピレーションを受けて製造されていました。 当時のモノクロ放送でも見やすいようにデザインされた白黒のカラーリングを踏襲しており、さらにメタリックプリントを組み合わせることで現代的なデザインとなっています。
まとめ
1930年大会に比べれば大会の規模やボールの質は大きく進化をしてきました。今後もワールドカップは世界最高の大会として存在していくはずですし、その時々のサッカーに関係する最高のものがワールドカップに集結します。
だからこそ、ワールドカップを見ることでその時代のサッカーの流れが見えてきますし、今後もワールドッドカップの進化には目を離すことができません。
文・スポシル編集部/提供元・SPOSHIRU
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