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微細構造をつくって発色させる「構造色インクジェット印刷」

微細構造をつくって発色させる「構造色インクジェット印刷」

通常のインクジェット印刷は、インクに色素となる顔料を含ませることで、「色」を生み出します。

ところが新しく開発された「構造色インクジェット印刷」のインクには、顔料が含まれていません。

インク膜内に微細構造を形成することで、構造色を発現させるのです。

つまり表面に「絵具を塗る」というよりも、「微細構造

モルフォ蝶と同じ「構造色で色付けする新しいインクジェット技術」(富士フイルム)
(画像=構造色インクジェットの作品。フルカラーかつ鮮やかなグラデーションを生み出せる / Credit:富士フイルム株式会社_「構造色インクジェット技術」新開発(2022),『ナゾロジー』より 引用)

そして従来の印刷技術のように、複数のインクが用意され、それぞれが色味の異なる構造色を発現させます。

それぞれのインクの組み合わせや濃度を調整することで、構造色によるカラフルな描画か可能になるのです。

実際、赤から青までフルカラーの構造色を表現でき、さまざまなパターンやグラデーションもつくりだせます。

モルフォ蝶と同じ「構造色で色付けする新しいインクジェット技術」(富士フイルム)
(画像=同じ印刷物でも見る角度で色が変化, 背景が黒(左)、白(右)とで色が変化 / Credit:富士フイルム株式会社_「構造色インクジェット技術」新開発(2022),『ナゾロジー』より 引用)

さらに同じ印刷物でも、見る角度によって色合いを変化させることが可能。

また背景の色によって透過光を調整し、印刷物の色を変化させることもできるのだとか。

モルフォ蝶と同じ「構造色で色付けする新しいインクジェット技術」(富士フイルム)
(画像=構造色インクジェット技術が採用された例。(左)CITIZEN L『アンビリュナ』, (右)舘鼻則孝氏のアート作品 / Credit:富士フイルム株式会社_「構造色インクジェット技術」新開発(2022),『ナゾロジー』より 引用)

さて、構造色インクジェット技術は、既に腕時計やアート作品に採用されています。

構造発色の印刷技術が実用化したので、今後はさまざまな分野で構造色の利用が増加していくことでしょう。

私たちの知っている「従来の色の世界」とは異なった「構造色の世界」が広がっていくのです。


参考文献

「構造色インクジェット技術」新開発


提供元・ナゾロジー

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