「自然為替レート」はいくらか

では円は、どこまで下がるだろうか。一つの目安は貯蓄=投資になった1990年の120円台だが、このときは「実質金利<自然利子率」だった。今は自然利子率がマイナスなので、不等号はこの逆である。

これが円安になって投資が増えて等号になり、需給ギャップが縮小すると、貯蓄=投資になる自然為替レート(均衡実質為替レート)に近づくと考えることができる。1990年の130円より大幅に安くなれば、生産拠点が国内にもどってきて、投資不足が解消されるかもしれない。

かつて貯蓄=投資だったのは、1ドル=360円の固定為替相場の時代だが、さすがにそれはないだろう。90年代以降の投資不足の時期は、1995年と2010年の異常な円高を除くと、100~120円のレンジなので、自然為替レートはこれよりかなり円安だと思われる。

資源インフレで経常収支は赤字基調になってきたので、長期的には円安の傾向が続くだろう。これは戦争をきっかけにして為替レートが自然な水準に回帰していると考えることもできるが、日銀がゼロ金利を無理に守ることは円安を加速し、経済を不安定化するリスクが大きい。

戦争と経済の関係については、もっと複雑な問題があるので、4月1日からのアゴラ経済塾では、みなさんの資産運用も含めて考えたい。

戦争がもたらした「超円安」はどこまで行くか
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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