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- 英国では、コロナ禍により小袋の小麦粉需要が急増している
- 1000年の歴史をもつ水車製粉所が数十年ぶりに再稼働し、地元の小麦粉供給をサポート
英国・アイルランド製粉業者協会(NABIM)によると、コロナ禍の外出規制によって、英国の消費者向けの小麦粉需要が急増しているとのこと。
この需要急増に対応するため、1000年の歴史をもつ英国の製粉所が数十年ぶりに営業生産を再開しました。
目次
コロナによってスーパーから小麦粉が消える
1000年前の歴史ある水車製粉所が再稼働
コロナによってスーパーから小麦粉が消える
新型コロナウイルスによって、世界中の食品需要は大きく変化しました。
特にパリやバンコクでは観光客相手の飲食店が衰退し、世界的な小麦粉の消費量が減少しています。このことは、小麦粉を輸出している業者にも影響を与えました。
しかし、一部の地域では、逆に小麦粉の需要が高まっています。
小麦粉を自給している英国もその1つです。
英国は週に約10万トンの小麦粉を生産していますが、そのほとんどは、パン屋や他の食品メーカーに向けてのものであり、25キロの大袋に梱包されています。スーパーマーケットに並ぶ小袋は全体の約4%でしかありません。
ですから、コロナ禍で消費者が自炊するようになり、スーパーに並ぶ小袋はあっという間に売り切れました。
現在の大型工場は、小麦粉供給の4%分の小袋パッキングラインしか持ち合わせていないため、24時間フル稼働させていますが、それでも供給が追い付いていません。
このような状況に対処すべく、歴史あるスターミンスター・ニュートン製粉所が再稼働しました。
この製粉所は規模が小さく、もともと小袋の扱いになれているため、地元の供給を迅速にサポートできるのです。
1000年前の歴史ある水車製粉所が再稼働
スターミンスター・ニュートン製粉所は、西暦1016年、ドーセット州のストア川のほとりに建てられた水車製粉所です。
900年以上も製粉工場として働き続け、1970年に閉鎖。その後、1994年には博物館へと改装されました。
「BBC News」によると、製粉業者であるピート・ルーズモア氏とイモ―ジェン・ビトナー氏は、月に2日間この博物館を運営しており、訪問者に小さなお土産用の小麦粉を提供するため、少量の小麦粉を生産していました。
しかし、地元の食料品店で小麦粉が不足していることを知った二人は、水車製粉所で今できることを行なおうと考えたのです。
ルーズモア氏は、次のように述べています。
「新型コロナウイルスが発生したとき、地元のお店はあっという間に小麦粉を使い果たしてしまいました。私たちには良質の製粉用小麦の在庫があり、それを挽いて小麦粉にするための手段と技術もあったので、何かお手伝いができると思ったのです」
スターミンスター・ニュートン製粉所は、1904年に新しくなった25馬力の水車で稼働します。
フル稼働時には、1日約30キロの小麦粉を生産でき、4月だけでも1トン以上の小麦を製粉しました。この量は、通常時の博物館への年間供給量に相当するとのこと。
ルーズモア氏とビトナー氏は、既に約1.4キロの袋を数百販売しており、地元の小麦粉不足を支援できています。
2人とも、長年地域社会に貢献してきた製粉所で過せることを幸運だと感じており、「古い製粉所が挑戦を続けることができるのは嬉しいことです」と述べています。
新型コロナウイルスによる影響はいつまで及ぶかは分かりませんが、これからも、彼らと歴史ある製粉所の貴重な働きが地域社会を支えていくことでしょう。
提供元・ナゾロジー
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